商業登記関係 取締役、監査役等の役員変更登記の登録免許税(株式会社)
株式会社と役員変更登記
株式会社の取締役や監査役、会計参与(以下、併せて「役員」といいます)には必ず任期があり、任期を満了した役員等は退任します。
これは、同じ人物が引き続き役員になる場合も同様であり、再任手続きとその登記をしなければなりません。
任期満了を迎えたときであっても、後任者が選任されないことにより会社法あるいは定款で定める役員の員数が満たされないときは、当該任期満了を迎えた役員は退任することなく≫権利義務役員としてその業務を行う責任を負います。
役員変更登記を放置すると
役員変更登記は、その効力が生じた時から2週間以内にその登記申請をしなくてはなりません(会社法第915条1項)。
この期間を過ぎてから登記申請をしたときは、100万円以下の過料が課される可能性があり(会社法第976条)、また12年以上何も登記をしていない株式会社は、法務局の職権によって解散させられてしまう可能性がありますのでご注意ください。
役員変更登記と登録免許税
役員変更登記を法務局へ申請するときは、登録免許税を納めなければなりません。
役員変更登記の登録免許税は、登記申請をする株式会社の資本金の額によって変動し、その額は申請1件につき1万円または3万円となっています。
資本金の額が1億円以下の会社
資本金の額が1億円以下の株式会社が申請する役員変更登記の登録免許税は1万円です。
1億円「以下」ですので、資本金の額が1円の会社はもちろんのこと、資本金の額がジャスト1億円の会社の役員変更の当該登録免許税も1万円となります。
資本金の額が1億円を超える会社
資本金の額が1億円を超える株式会社が申請する役員変更登記の登録免許税は3万円です。
1億円を「超える」ですので、資本金の額が3億円の会社はもちろんのこと、資本金の額が1億1円の会社の役員変更の当該登録免許税も3万円となります。
資本金の額が変動する場合
役員変更登記の登録免許税と資本金の額の関係は、登記申請時がベースとなるものではありません。
役員変更の効力発生時の資本金の額が計算のベースとなります。
資本金1000万円の株式会社が、平成30年5月1日に取締役就任、平成30年6月1日に資本金を3億円へ増資をしたときは、この取締役就任の登記に係る登録免許税は1万円です(登記申請時の資本金の額は3億円)。
同様に、資本金3億円の株式会社が、平成30年5月1日に取締役就任、平成30年6月1日に資本金を1000万円へ減資したときは、この取締役就任の登記に係る登録免許税は3万円です(登記申請時の資本金の額は1000万円)。
なお、資本金1億円以下のときに取締役1名就任、その後増資をして資本金1億円を超えるときに監査役1名就任した場合、この役員変更登記を1件で申請するときの登録免許税は3万円です。
例えば、資本金1000万円の株式会社が、平成30年5月1日に取締役就任、平成30年6月1日に資本金を3億円へ増資、平成30年6月15日に監査役就任をするようなケースです。
これは、資本金1億円を超えるときに取締役1名就任、減資をして資本金1億円以下となったときに監査役1名就任した場合も同様に3万円です。
1回の申請で複数名の役員変更登記をする場合
役員変更登記の登録免許税は、申請1件/1社につき1万円または3万円です。
申請の件数によって登録免許税が課されているため、1回の登記申請で役員複数名の変更分を申請しても登録免許税は一定です。
これは、平成30年5月28日に取締役が3名就任した旨の変更登記も1件の申請であれば1万円または3万円であり、平成28年5月30日に取締役2名就任・平成30年5月28日に監査役1名就任した旨の変更登記も、1件の申請であれば登録免許税は1万円または3万円です(なお、平成28年の取締役就任登記につき登記懈怠により過料の対象です)。
あえて平成28年5月30日の取締役就任登記と、平成30年5月28日の監査役就任登記を別々に申請するのであれば、同日に登記申請をした場合であっても、登録免許税は1万円×2または3万円×2かかってしまいます。
代表取締役の住所変更も同じ
代表取締役の住所変更登記の登録免許税も、役員の選任、退任登記の登録免許税と同じ区分です。
つまり、取締役就任・退任登記、監査役就任・退任登記と代表取締役の住所変更登記を一緒に(同一の申請書で)申請したときは、登録免許税は全て合わせて1万円または3万円です。
他の変更登記も一緒に申請する場合
役員変更登記と併せて他の変更登記を申請するときは、その分の登録免許税が加算されます。
例えば、役員変更登記と一緒に商号を変更したり目的を変更するようなケースです。
役員変更登記と商号変更登記を申請するときは、その登録免許税は3万円(商号変更分)+1万円または3万円(役員変更分)となり、4万円または6万円となります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。