商業登記関係 株式会社がみなし解散状態を脱する方法(会社継続の登記)
みなし解散という制度
一人株式会社やご家族で経営されている株式会社では、役員の重任(再任)を除いて登記事項に変更が生じないことも少なくなく、加えて役員の実質的な変更もない場合はその重任登記もし忘れていることケースがあります。
なお、役員は継続して同じ人が業務を行う場合も、任期が到来したらその再任決議とその登記を申請しなければなりません。
役員の任期については、こちらの記事をご参照ください。
休眠会社とは
休眠会社とは、「最後の登記から12年を経過している株式会社」のことをいいます(会社法第472条1項)。この株式会社には、特例有限会社は含まれません。
株式会社の役員の任期は最長10年ですので、12年も登記簿が変更されていないのであれば、当該株式会社は活動をしていない(休眠している)会社と判断されます。
特例有限会社会社や合同会社においては、役員の任期がないため、最低限●年ごとに登記簿の記載を変えなくてはならないという期限のあるものがないため、休眠会社となることはありません。
休眠会社の整理
休眠会社は、一定の手続きを経て整理され、解散したものとみなされる(みなし解散といいます)ことがあります。
みなし解散に関する通知が法務局から届いた会社は、みなし解散の登記をされないように手続きが必要となりますので、早急に次のページをご確認ください。
みなし解散状態になると、会社の登記簿には解散した旨が記載されることになってしまいます。
みなし解散が行われるかどうか、それはいつ頃かは確定したものはありません。
しかし、ここ数年は毎年行われており、また今後は毎年行われることを法務省HPでは示唆しているため、今後も継続して行われていく可能性は高いでしょう。
会社継続の登記
会社の登記簿を確認したところ、みなし解散の登記がされていたとしても、その会社がなくなったり会社を畳まなければならないわけではありません。
みなし解散の登記は、一定の手続きや申請を行うことにより、解散している会社ではない状態に戻ることができます。
会社が復活するこの登記のことを、会社継続の登記といいます。
会社継続するには期限があります
会社継続の決議は、解散したとみなされた日から3年以内に限り行うことができます。
また、会社継続の登記は効力発生日から2週間以内にすることが求められています(会社法第915条)。
みなし解散の登記が入ってるけどよく分からないから放置、、、しておくと、会社継続ができなくなってしまうかもしれません。
会社継続の登記に必要な手続き
会社継続に必要な手続きは次のとおりとなります。しかし、会社の機関設計などによって内容が異なる可能性があり、このページでは全ての機関設計のパターンを網羅しているわけではありませんので、気になる方は当社にお問い合わせください。
株主総会の開催
会社を継続するには、その旨を株主総会で決議する必要があります。この決議は、特別決議の要件を満たさなくてなりません。
さらに、休眠会社においては役員の任期が切れているはずですので、新しい役員の選任(再任含む)と、必要に応じて定款変更の決議もします。
清算人、代表清算人の登記
みなし解散の登記をされると、取締役と代表取締役の氏名・住所には下線が引かれ、退任したことになっています。
そのため、会社継続の登記の前提として、清算人と代表清算人の登記をしなければなりません。
定款に清算人・代表清算人に関する定めがあればその規定に従うことになりますが、無ければみなし解散時の取締役・代表取締役を法定(代表)清算人として登記をします。
なお、監査役はみなし解散時に退任することはありません。
会社継続の登記、他
株主総会の決議が終わったら、会社継続の登記と併せて役員変更の登記を申請します。必要に応じて、取締役会設置会社の登記等も併せて登記します。
これらの登記は、清算人、代表清算人の登記と一緒にすることが可能です。
会社継続の登記の添付書類
(代表)清算人の登記、会社継続の登記、役員変更の登記、取締役会設置会社の定めの登記の添付書類の一例は次のとおりです。
取締役会設置会社が、取締役会設置会社として継続の登記をすることを前提としていますので取締役1名の会社として継続するとき等内容の変わるときは、添付書類も変わる可能性があります。
- 定款
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録
- 役員の就任承諾書
- 役員の印鑑証明書 ※
※監査役は、印鑑証明書以外の本人確認書類を添付するときは、印鑑証明書の添付は不要です。
≫取締役・監査役の就任と本人確認証明書
登記申請時に一緒に法務局へ提出する書類は次のとおりです。
- 印鑑届書
会社継続の登記の登録免許税
資本金1億円以下の株式会社が、(代表)清算人の登記、会社継続の登記、役員変更の登記、取締役会設置会社の定めの登記をするときの登録免許税は次のとおりです。
- 9,000円 清算人、代表清算人の登記
- 30,000円 会社継続の登記
- 10,000円 役員変更の登記
- 30,000円 取締役会設置会社の登記
合計79,000円となります。
取締役会設置会社の定めは、みなし解散時に抹消されるため、取締役会設置会社として継続するときはその分の登録免許税(3万円)も納めます。
取締役会設置会社であった会社が、取締役会非設置会社として継続するときはこの3万円が不要となります。
上記の他に、目的変更、株式の譲渡制限に関する規定の変更、(取締役会非設置会社へ移行するため)監査役設置会社の定めの廃止を併せてするときは、上記とは別区分で3万円の登録免許税がかかります。
印鑑カードの交付申請
みなし解散前の印鑑カードは、みなし解散時に失効することになりますので、会社継続の登記が終わったら再度管轄法務局に発行してもらいます。
登記懈怠による過料
会社登記のほとんどは、効力が発生してから2週間以内に登記申請をしなければなりません(会社法第915条)。
その期間を超えてしまうと、100万円以下の過料を課される可能性があります(会社法第976条)。
そして、そもそも休眠会社は少なくとも役員の選任懈怠(選任懈怠も過料対象)か登記懈怠の状態の会社ですので、実際に過料が課されるかどうかは別として、その対象にはなってしまっています。
とはいえ、今後も当該休眠会社で事業を行っていくのであれば、一刻も早くみなし解散状態を解消しなくてはなりません。
みなし解散状態をそのままにしておくとどうなるか
解散したとみなされてから3年以内に限り会社継続の決議をすることができます。
逆に言えば、解散したとみなされてから3年を経過してしまうと、それ以降は会社継続の決議をすることができなくなります。
こうなると会社は事業活動を行うことはできず、以降は清算事務しか行えないことになってしまいます。
なお、解散登記から10年を経過したときは登記官が職権で登記記録を閉鎖することができますが(商業登記規則第81条1項)、これは清算結了とは異なります。
解散したとみなされてから3年を経過するまでに株主総会で継続の決議をしなかった株式会社は、当該会社自身において清算手続きをしていくことになります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。