商業登記関係 債権者保護手続きにおける「本公告掲載の日から」と「本公告掲載の翌日から」
債権者保護手続きとダブル公告
資本金の額の減少、資本準備金の額の減少、合併や分割等の組織再編行為、株式会社から持分会社あるいは持分会社から株式会社への組織変更行為をするときは、債権者保護手続きをしなければなりません(会社法第449条、同法第789条他)。
なお、分割会社が重畳的債務引受をする会社分割や、子会社の新株予約権社債を親会社が承継せず、かつ子会社の株主に親会社の株式を交付する株式交換等、一定の組織再編行為においては債権者保護手続きが不要とされています。
ダブル公告
債権者保護手続きの原則は、官報に一定の事項を公告し、かつ知れたる債権者へは各別に催告をすることです。
一方で、官報公告に加えて、定款で定められている公告方法(日刊新聞紙による公告または電子公告)においても債権者保護公告をすることにより、知れたる債権者への各別催告を省略することが可能です(資本金の額の減少につき、会社法第449条3項)。
本公告掲載の日から
債権者保護手続きに電子公告を利用するときは、電子公告調査機関に事前に依頼をして、電子公告の調査を受けなくてはなりません。
調査会社の結果報告書は登記に使用します。
一般的な流れとしては電子公告掲載日の4-5営業日前までには調査会社に調査手続きの申込みをし、例えば2018年6月26日の0時から電子公告の調査を受けるのであれば、前日である2018年6月25日のお昼くらいから当該ホームページには公告を掲載することになります。
掲載の日の0時から誰でも見れるようになることから、電子公告の掲載日から債権者保護手続きの期間の計算をスタートすることができます(0時に閲覧可能であることが前提です)。
そのため、電子公告の内容は次のとおりとなります。
当社は、資本金の額を○○○円減少することに
いたしました。
この決定に対し異議のある債権者は、本公告掲
載の日から一箇月以内にお申し出下さい。
なお、最終貸借対照表の開示状況は次のとおり
です。
(以下省略)
※下線は実際の公告には入りません。
電子公告と翌日から起算
電子公告においても、0時から電子公告の掲載や調査をスタートさせるのでなければ、「本公告掲載の翌日から」のように債権者保護手続きの期間の起算日は翌日となります。
0時から電子公告の掲載や調査をスタートさせたとしても、行うメリットがあるのかどうかは別として、債権者保護手続きの期間の起算日を翌日とすることも可能と思われます。
電子公告のデメリット
電子公告は原則として、債権者保護手続きの期間中はずっと債権者保護公告を掲載しておかなければなりません。
会社としては掲載を途中で止めるつもりは無いとしても、サーバーダウンやサーバーのメンテナンス等によって掲載が中断してしまうことがあり得ます。
ダブル公告をするのであれば、日刊新聞紙による公告の方が費用がかかりますが、安心して債権者保護手続きの期間満了日を迎えることができます。
本公告掲載の翌日から
官報公告と日刊新聞紙による公告は、債権者(に限らず多くの人が)がその内容を確認できるのは5時くらいからでしょうか(日刊新聞紙の場合)。
少なくとも、その公告内容を掲載日の0時から見られるようになるわけではありません。
そのため、債権者保護手続きの期間の計算は、翌日から起算することになります。
結果として、官報公告や日刊新聞紙による公告の掲載内容は次のとおりとなります。
当社は、資本金の額を○○○円減少することに
いたしました。
この決定に対し異議のある債権者は、本公告掲
載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。
なお、最終貸借対照表の開示状況は次のとおり
です。
(以下省略)
※下線は実際の公告には入りません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。