商業登記関係 会社の実印を無くしました。どうすればいいでしょうか?
いわゆる会社実印
登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならず(商業登記法第20条1項)、各法人の印鑑提出者は次の者のうちの1名以上の者です。
代表者が登記所に提出した印鑑は、会社実印と呼ばれています。
契約自体は口頭でも成立するものが多いですが、ほとんどの契約は書面に落とされ、大切な契約ほど契約書等に会社実印を押すことを求められますので、会社実印はとても大切なものであることは間違いありません。
法務局へ登記申請をするにも会社実印は必須です。
会社実印を紛失したとき
会社実印は小さいものですので、もしかしたら無くしてしまうということもあるかもしれません。
会社実印を一度無くしてしまうと二度と登録できないのかというと、そうではありません。
管轄法務局で会社実印を再登録をすることができます。個人の実印でも同じですね。
登録する印鑑のルール
会社実印を再登録するには、新しく会社実印となる(新しく届け出る)印鑑を用意しましょう。
これは無くした印鑑と同じ印影のものである必要はありません。
ところで、会社実印には次の2つのルールがあります。
- 印鑑の大きさが、辺の長さが1cmの正方形に収まるものはNG、また辺の長さが3cmの正方形に収まらないものもNG(商業登記規則第9条3項)。
- 照合に適するもの(商業登記規則第9条4項)
印鑑の再登録には何が必要か
会社実印を再登録するために≫印鑑(改印)届書(法務局)を管轄法務局へ提出します。
印鑑届書には、次の123を押印して、4を添付して提出します。
- 新しく届け出る印鑑(新しい会社実印)
- 印鑑を届け出る代表者の個人実印
- 代理人の認印(代理人が提出する場合)
- 印鑑を届け出る代表者の個人印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
代表者の個人印鑑証明書は原本還付手続きをすることにより、原本を還付することができます。
どこで手続きをするか
会社・法人を管轄する法務局(管轄法務局)で行います。
東京都中央区に本店のある会社の管轄法務局は「≫東京法務局(本局)」で、東京都港区に本店のある会社の管轄法務局は「≫東京法務局(港出張所)」です。
また、埼玉県内にある会社であれば「≫さいたま地方法務局(本局)」、千葉県内にある会社であれば「≫千葉地方法務局(本局)」です。
郵送でも可能か
印鑑届、改印届は、郵送によっても行うことが可能です。
書類に不備があったときには訂正や再提出が必要となりますので、管轄法務局が行ける距離にあるのであれば、慣れていない方は直接窓口へ行った方がいいでしょう。
郵送の場合は、書類に不備があったときに法務局から連絡が来るように連絡先も添えておくといいかもしれません。
印鑑カードは引き続き使えるか
印鑑提出者が変わらずに、印鑑を新たに届け出るときは、従前に使用していた印鑑カードを引き続き使用することになります。
印鑑カードの廃止届を提出して、印鑑カード交付申請書を提出することにより新たに印鑑カードを発行することはできますが、印鑑カードがあるのにも関わらずそこまでする人は稀でしょう。
印鑑カードを再発行する場合
会社実印だけでなく、印鑑カードも紛失してしまったときは、印鑑の再提出に加えて印鑑カードの再発行もしましょう。
印鑑カードを廃止するには、まず印鑑カードの廃止届を提出して、印鑑カード交付申請書を提出する方法により新しい印鑑カードを発行してもらいます。
会社実印も印鑑カードも紛失した場合、次の書類を法務局へ提出します。
上記1には提出者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)が必要です。印鑑証明書は原本還付をすることができます。
印鑑カードを紛失してしまった場合の手続きについては、こちらの記事もご参照ください。
紛失したものと用意するもののまとめ
紛失したもの | 用意するもの | 提出する書類 |
---|---|---|
会社実印 | 新しい会社実印 提出者の個人実印 提出者の個人印鑑証明書 | ≫印鑑届書(法務局) 提出者の個人印鑑証明書 |
印鑑カード | 会社実印 | ≫印鑑カード廃止届書(法務局) ≫印鑑カード交付申請書(法務局) |
会社実印 印鑑カード | 新しい会社実印 提出者の個人実印 提出者の個人印鑑証明書 | ≫印鑑届書(法務局) ≫印鑑カード廃止届書(法務局) ≫印鑑カード交付申請書(法務局) 提出者の個人印鑑証明書 |
※提出者の個人印鑑証明書は発行後3ヶ月以内のものに限ります。
すぐに新しい印鑑を用意できない
新しい会社実印をすぐに用意できないときは、とりあえず先行して印鑑の廃止届だけを提出しておいた方がいいでしょう。
印鑑の取得者に、会社実印を勝手に使われてしまう可能性があるためです。
会社実印も印鑑カードも大切なものですので、無くさないようにご注意ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。