商業登記関係 (会社登記)登録免許税の計算方法と、よくある登記の登録免許税
会社登記と登録免許税
会社の登記を申請するときは、その申請内容に応じた登録免許税を納めなければなりません(登録免許税法)。
登録免許税を納付しなかった場合は、当該登記申請は却下されてしまいます(商業登記法第24条)。
登録免許税を納付したときに、その額が足りなければ追加で納付しなければならず、多く納付してしまったときは還付手続きをしなければならないため、正確な登録免許税の額を納付したいところです。
還付手続きをしても、その場ですぐに還付されるわけではなく、数ヶ月の期間を要します。
登録免許税の一覧
会社の登記に関する登録免許税は、登録免許税法別表第1第24号に定められています。
ここでは株式会社と合同会社の登記のうち、主なものを記載しています。
株式会社の設立 | 資本金の額の1000分の7 (15万円に満たない場合は15万円) | 資本金約2140万円まで、登録免許税は15万円 |
合同会社の設立 | 資本金の額の1000分の7 (6万円に満たない場合は6万円) | 資本金約857万円まで、登録免許税は6万円 |
資本金の額の増加 (増資) | 増加する資本金の額の1000分の7 (3万円に満たない場合は3万円) | |
役員の変更 | 1件につき3万円 (資本金の額が1億円以下の会社の場合1万円) | ≫役員変更の登録免許税 |
登記事項の変更 | 1件につき3万円 | 商号変更 目的変更 公告方法変更 発行可能株式総数変更 株式の分割、併合 譲渡制限規定変更 責任免除規定変更 責任限定契約変更 監査役設置会社の定め変更 資本金の額の減少 その他 |
本店移転 支店移転 | 1箇所につき3万円 | 管轄外本店移転の場合は、3万円×2=6万円 |
支店設置 | 1箇所につき6万円 | ≫支店の設置と登録免許税 |
支店における登記 | 1件につき9000円 | 更正、抹消は1件につき6000円 |
取締役会、監査役会に関する事項の変更 | 1件につき3万円 | |
新株予約権の発行 | 1件につき9万円 | |
支配人の選任等 | 1件につき3万円 | |
合併、組織変更 (存続会社等) | 増加する資本金の額1000分の1.5 (一定の額を超える部分については1000分の7) (3万円に満たない場合は3万円) | 1件につき3万円 (消滅会社) |
会社分割 (承継会社) | 増加する資本金の額1000分の7 (3万円に満たない場合は3万円) | 1件につき3万円 (分割会社) |
解散 | 1件につき3万円 | |
清算人の選任等 | 1件につき9000円 | |
清算結了 | 1件につき2000円 | |
登記の更正、抹消 | 1件につき2万円 |
参照 ≫No.7191 登録免許税の税額表(国税庁)
別の区分の登録免許税は加算される
別の区分の登録免許税は加算されていきます。
東京都中央区内で本店を移転し、商号も変更した場合は、これらは別区分であるため3万円(本店移転)+3万円(商号変更)=6万円の登録免許税を納付します。
なお、設立登記に関しては設立する会社の資本金の額に対して税率が決まっているため、
- 種類株式を発行する株式会社
- 責任免除規定を設けている株式会社
- 取締役会設置、監査役設置している株式会社
これらの株式会社も、取締役1名の株式会社も登録免許税は同じです。
同じ区分の登録免許税は加算されない
同じ区分の登録免許税は、1つの登記申請でする限り別途加算されていきません。
1つの登記申請で、役員につき複数名の変更に関するものであっても、一律3万円(資本金の額が1億円以下の会社は1万円)です。
また、一例として次の変更登記も同じ区分ですので、1つの登記申請でする限り一律3万円です。
- 商号変更
- 目的変更
- 公告方法の変更
- 譲渡制限規定の変更
- 発行可能株式総数の変更
- 株式分割等により発行済株式数の変更
- 責任免除規定、責任限定契約に関する変更
- 監査役設置会社の定めに関する変更
- その他
登記申請1件ごとにカウントされる
登録免許税は1申請ごとに納付しなければなりません。
7月1日に株主総会の決議によって取締役2名選任をした場合でも、取締役選任による変更登記につき1名ずつ別に申請したのであれば、3万円+3万円=6万円(または1万円+1万円=2万円)の登録免許税を納付することになります。
これを1つの登記申請で行った場合は3万円(または1万円)ですので、1つの登記申請で行うことが一般的です。
よくある登記と登録免許税
登録免許税は登録免許税法(別表第1第24号)に当てはめて計算をすることになりますが、その計算例をみていきましょう。
特に、ご依頼やご質問いただくことの多い変更登記を題材にしています。
取締役1名の株式会社が取締役会を設置
取締役1名の株式会社(資本金100万円)が、新たに取締役会を設置するときは、次の登録免許税を納付します。
取締役会設置会社の定め設定 | 3万円 |
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監査役設置会社の定め設定 | 3万円 |
取締役(代表取締役)、監査役の選任 | 1万円 |
(譲渡制限規定の変更) | |
(監査役の監査の範囲に関する定めの登記) | |
合計 | 7万円 |
同じ申請で「譲渡制限規定の変更」をするときは、この登記の登録免許税は「監査役設置会社の定め設定」と同じ区分ですので、追加の登録免許税は発生しません。
同じ申請で「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨」の登記をした場合でも、この登記の登録免許税は役員変更と同じ区分ですので、追加の登録免許税は発生しません。
取締役会設置会社が取締役1名の株式会社へ移行
取締役会を設置している株式会社(資本金100万円)が、取締役1名のみの株式会社となるときは、次の登録免許税を納付します。
取締役会設置会社の定め廃止 | 3万円 |
---|---|
監査役設置会社の定め廃止 | 3万円 |
取締役(代表取締役)、監査役の変更 | 1万円 |
(譲渡制限規定の変更) | |
(監査役の監査の範囲に関する定めの登記) | |
合計 | 7万円 |
監査役のいない株式会社が新たに1名監査役を選任
取締役1名の株式会社(資本金100万円)が、新たに監査役を1名選任するときは、次の登録免許税を納付します。
監査役設置会社の定め設定 | 3万円 |
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監査役の選任 | 1万円 |
(監査役の監査の範囲に関する定めの登記) | |
合計 | 4万円 |
同じ申請で「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨」の登記をした場合でも、この登記の登録免許税は役員変更と同じ区分ですので、追加の登録免許税は発生しません。
複数の役員変更
役員変更の登記は、1つの申請でする限り何名の役員に関するものであっても3万円(または1万円)です。
次のような変更登記でも、1つの申請であれば登録免許税は3万円(または1万円)です。
※なお、少なくとも平成27年~平成29年の登記につき、登記懈怠のため過料の対象です。
- 平成27年 取締役1名死亡による退任
- 平成28年 監査役1名辞任、監査役1名就任
- 平成29年 代表取締役の交代
- 平成30年 取締役全員重任
役員変更の登録免許税算定の基準となる資本金の額は、役員変更当時の資本金の額のことを指します。
複数の新株予約権の発行
新株予約権の発行に関する変更登記の登録免許税は、申請1件につき9万円です。
第1回新株予約権、第2回新株予約権を別の日に発行した場合でも、1つの申請でする限り、登録免許税は9万円です。
これは第1回新株予約権(有償)、第2回新株予約権(無償)であっても同様です。
株式分割をして募集株式の発行
資本金100万円の株式会社が、株式分割をして、資本金を1100万円(新株発行)とするときは、次の登録免許税を納付します。
株式分割による発行済株式数の変更 | 3万円 |
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1000万円の募集株式の発行 | 7万円 |
(発行可能株式総数の変更) | |
(新株予約権の変更) | |
合計 | 10万円 |
株式分割と同じ申請で、発行可能株式総数の変更や株式分割にともなう新株予約権の変更をしても、これらの登録免許税は株式分割による発行済株式数の変更登記と同一区分ですので、追加の登録免許税は発生しません。
新たに種類株式を設定して、募集種類株式の発行
資本金100万円の株式会社が、新しく種類株式を設定して、この種類株式を発行して資本金を1100万円とするときは、次の登録免許税を納付します。
種類株式の設定による変更 | 3万円 |
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1000万円の募集株式の発行 | 7万円 |
合計 | 10万円 |
無対価合併と商号変更(存続会社)
吸収合併の存続会社において、無対価合併と同時に商号を変更したときの登録免許税は3万円です。
なお、合併により存続会社の資本金が1万円増加した場合は別区分となるため、登録免許税の合計は6万円となります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。