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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(事業年度編)

定款の条文の内容を解説します。

会社法が施行されてから株式会社の設立も容易になり、また現在は色々なサイトで株式会社の設立に関する情報が溢れているため、起業される方自身で株式会社設立の手続きをされるケースも少なくありません。

しかし、インターネット上にある定款の内容の一部、あるいは全部をよく理解せずにそのまま利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、会社設立後にこんなはずではなかった、、、という方が一人でも少なくなるように、日本公証人連合会のホームページに掲載されている

1 小規模な会社(Small-Sized Company)
株式が非公開で、取締役が1名のみの小規模な株式会社の定款記載例であり、定款の内容も簡潔なものを紹介しています。
起業者の方が小規模な会社からスタートしたいと考える場合に、定款ドラフトの作成に当たって、参考にされる一つの定款記載例です。

≫定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)【日本公証人連合会】

を基に、定款の各条文の内容について解説をしていきたいと思います。

ビジネスに専念したい方

一方で、会社設立の手続きは初めて行う方には時間がかかる上に、一生のうちにその知識を何度も使うわけではありません。

会社設立の手続きは専門家に任せて自分のビジネスに集中したい方は、こちらのページをご参照ください。
≫株式会社設立サービス
≫合同会社設立サービス

事業年度に関する条文

(事業年度)
第20条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月末日までの年1期とする。

この規定は任意的に定款に定めることができる事項ですが、ほぼ全ての会社が事業年度を定款に記載しています。

事業年度が無いと、決算の承認も決算申告もできないためです。

事業年度を定款に定めなかったとき

設立時の定款に事業年度を定めなくても、株式会社の設立を行うことはできます。

しかしその場合、設立後2ヶ月以内に、税務署へ事業年度を届け出ることになります。

定款作成日、定款認証日と事業年度

会社設立時は、会社の設立日から1年以内に事業年度末を迎える設計にしなければなりません。

これは、あくまで会社設立日をスタートとして考えますので、定款の作成日や定款の認証日は考慮しません。

6月末を事業年度の末日とする場合、5月に定款を作成して、6月に定款認証をしたとしても、7月以降に会社設立の登記申請をすれば最初の事業年度末は翌年の6月末となります。

もし6月中にこの会社の設立登記の申請したのであれば、最初の事業年度は数日で終わってしまうことになると思います。

なお、6月末を事業年度末とする定款を6月中に公証役場で認証しても、この記載が原因で定款が認証されないということはありません。

事業年度末の表記

事業年度末は、上記記載例のとおり「3月末日」でもいいですし、「3月31日」という記載でも問題ありません。

しかし、2月末を事業年度末とするときは、「2月28日」ではなく「2月末日」としておいた方がいいでしょう。

うるう年があるためです。

事業年度に関するルール

事業年度は、事業年度末が設立日から1年以内の日であればいつでも良いとされています。

12月末決算や3月末決算の会社が多いですが、8月末決算や1月末決算とすることも可能です。

また、末日に限らず、5月5日や7月7日等の日を事業年度末とすることもできます。

事業年度末を5月5日とした場合、事業年度は毎年5月6日から翌年5月5日までということになります。

事業年度を決める際のポイント

事業年度は自由に決めることができます。

自由に決めることができるとなると、いつにすればいいのか悩む方も多いのではないでしょうか。

事業年度を決める際のポイントとしては、次のものがあります。

最初の事業年度を長くする

会社設立日から最初の事業年度末までの期間を長くするという考え方があります。7月に設立するのであれば、6月末を事業年度末にするという具合ですね。

これには2つの良い点があります。

1つ目は設立後短い期間で決算申告をしなくて良いことです。7月に設立をする会社の事業年度を9月末とすると、設立から約2ヶ月後の9月末に決算を迎えてしまいます。

2つ目は、資本金額が1000万円未満の会社の場合、2事業年度末まで消費税の納税義務の免除を受けることができる可能性がある点です。

最初の事業年度を長くすることにより、消費税の納税義務の免除期間を最大限利用することができます。

なお、1期目から売上の金額が大きい場合、免税事業者の観点から1期目を1年としない方が良いこともあり、消費税の納税義務の免除については顧問税理士にご確認ください。

自社の繁忙期を考慮する

業界的に繁忙期がある程度決まっている業界もあるかと思います。

繁忙期と事業年度末を少しずらすことにより、決算に関する業務と事業に関する業務の重複を避けることができます。

一方で、繁忙期と事業年度末を合わせることにより、繁忙期の売上を飛躍させるという狙いを持たせている会社もあります(決算売り尽くしセール)。

納税と資金繰りを考慮する

原則として、事業年度末から2ヶ月以内に消費税や法人税等の税金を納めなければなりません。

支出の多い時期に納税のタイミングが重なると、資金繰りが悪化してしまう可能性があります。

支出の多い時期と納税のタイミングはずらした方がいいでしょう。

会社設立後に事業年度末を変更する

事業年度は、設立時に一度決めたからといって永遠に変えられないものではありません。

定款に定めた事業年度は、株主総会の特別決議によって変更することが可能です。

事業年度は登記事項ではないため、事業年度を変更しても登記申請は不要ですが、定款(事業年度)変更後遅滞なく、税務署等へ異動届出書を提出しなければなりません。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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