商業登記関係 司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(取締役の任期編)
定款の条文の内容を解説します。
会社法が施行されてから株式会社の設立も容易になり、また現在は色々なサイトで株式会社の設立に関する情報が溢れているため、起業される方自身で株式会社設立の手続きをされるケースも少なくありません。
しかし、インターネット上にある定款の内容の一部、あるいは全部をよく理解せずにそのまま利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、会社設立後にこんなはずではなかった、、、という方が一人でも少なくなるように、日本公証人連合会のホームページに掲載されている
1 小規模な会社(Small-Sized Company)
株式が非公開で、取締役が1名のみの小規模な株式会社の定款記載例であり、定款の内容も簡潔なものを紹介しています。
起業者の方が小規模な会社からスタートしたいと考える場合に、定款ドラフトの作成に当たって、参考にされる一つの定款記載例です。≫定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)【日本公証人連合会】
を基に、定款の各条文の内容について解説をしていきたいと思います。
ビジネスに専念したい方
一方で、会社設立の手続きは初めて行う方には時間がかかる上に、一生のうちにその知識を何度も使うわけではありません。
会社設立の手続きは専門家に任せて自分のビジネスに集中したい方は、こちらのページをご参照ください。
≫株式会社設立サービス
≫合同会社設立サービス
取締役の任期に関する条文
第19条 取締役の任期は、選任後5年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
この規定は任意的に定款に定めることができますが、この規定を定める効果はどのようなものでしょうか。
取締役には任期がある
株式会社の取締役には必ず任期があり、任期を迎えた取締役は退任します。
同じ人が継続して取締役の職に就く場合でも、再任の手続きと登記をしなければなりません。
多くの中小企業、特に同族会社においては、取締役が入れ替わることが少ないためかこの再任の手続きと登記を忘れてしまっていることも少なくないのではないでしょうか。
取締役の選任懈怠と登記懈怠は、会社法によって過料の対象となっています(会社法第976条)。
取締役の任期は原則として2年
定款に取締役の任期について何も定めなければ、取締役の任期は2年(選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで)です(会社法第332条1項)。
単純に2年間ではないところに注意が必要ですね。
取締役の任期の計算方法については、こちらの記事をご参照ください。
非公開会社と取締役の任期
非公開会社においては、定款に定めることによって取締役の任期を10年(選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時)まで伸長することができます(会社法第332条2項)。
また、伸長するだけではなく、取締役の任期を1年(選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時)まで短縮することも可能です。
取締役の任期を何年にするか
唯一の株主が唯一の取締役(株主=取締役の1人会社)であれば取締役の任期は10年でいいでしょう。
株主A、取締役BであるようなケースではBを定期的に評価し、必要に応じて取締役をBからCにすることもあるかもしれません。
このようなケースでは、任期は1年-2年としておくこともお勧めです。
また、当初から取締役が複数名いる場合も安易に取締役の任期を10年とすると、設立後3年-4年経ってから方向性の違いが生じたときに取締役を辞めてもらうことも大変となってしまいます。
取締役の任期を短くしておけば、任期満了時に再任しないことにより当該取締役に去ってもらうことができます。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。