商業登記関係 相談事例 【相談事例】どうしても今期中に資本金の額の減少(減資)をしたい
資本金の額の減少と事業年度
今期中に資本金の額の減少(以下「減資」といいます)をしたいというニーズは一定数あります。
事業年度末の資本金の額が5億円を超えていれば、会社法上の大会社に該当することになりますので来期から会計監査人を設置しなければなりません(会社法第328条1項)。
事業年度末の資本金の額が1億円を超えていれば、税法上の大企業に該当することになり、中小企業とは適用される法人税等の税率が変わってきます。
加えて、今期の欠損を整理するために減資をして剰余金に振り替えたいという会社もあります。
減資には時間がかかる
取締役を1名追加する、本店を移転する、増資をする等の手続きは最短で1日で行うことができますが、減資は時間がかかる手続きです。
株式会社の場合、決算公告を毎年していて株主総会の招集手続きを省略することができる会社でも、最短の最短で40日程度は必要でしょう。
決算公告をしていない株式会社で、株主総会の招集通知の発送が必須な会社では、最短でも55日程度は必要です。
減資にはおよそ2ヶ月+の手続き期間がかかるものと思っていた方が良いでしょう。
債権者保護手続きの方法によってはもっと時間がかかることも
会社の公告方法が「日刊新聞紙」で、≫ダブル公告を行う場合は、「官報公告+個別催告」よりも時間がかかることが多いかもしれません。
官報よりも日刊新聞紙の方が、申込みから掲載までの期間が長いことが少なくないためです。
また、現在の会社の公告方法が「官報」で、これを「電子公告」に変更してから≫ダブル公告をする場合は、公告方法の変更登記も必要となるため多くの期間を要します(2ヶ月++くらい)。
決算月の前月にご相談
5月に入ってすぐに、事業年度末である6月末までに減資をしたいというご依頼がありました。
5月は祝日が多い月であるため、官報公告を申し込んでから掲載されるまでに日数を要します。
また、ご相談者様は決算公告をしていなかったため、決算公告をしている会社に比べ、減資公告の掲載までの日数は多くかかってしまいます。
ご相談にお越しいただいた日の翌日に官報公告を申込み、無事に手続きを終えることができました。
減資の手続きは余裕を持ったスケジュールで
減資の手続きには、法律上どうしても日数を要します。
債権者保護手続きが義務付けられていますので、日付を遡って効力を発生させることはできません(そもそもbackdateはよろしくありません)。
ご相談時に、ご希望の減資の効力発生日まであまり日がないとしたら、残念ながら当事務所も対応をすることができません。
減資を検討されている方は、お早めにご相談をいただければと思います。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。