商業登記関係 司法書士が一般社団法人の定款の条文を解説します(社員総会の構成、権限編)
一般社団法人の定款の条文の内容を解説します。
一般社団法人は協会ビジネスをされる方や社会貢献活動をされる方に人気のある法人形態です。
現在は色々なサイトで株式会社の設立に関する情報が溢れているため、ご自身で一般社団法人設立の手続きをされるケースも少なくありません。
しかし、インターネット上にある定款の内容をよく理解せずに、そのまま利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご自身で一般社団法人を設立する方のために、≫日本公証人連合会のホームページに掲載されている定款等記載例をベースとして、一般社団法人の定款の各条文について解説をしていきたいと思います。
以下、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を「法人法」といいます。
ビジネスに専念したい方
一般社団法人設立の手続きは初めて行う方には時間がかかる上に、一生のうちにその知識を何度も使うわけではありません。
一般社団法人設立の手続きは専門家に任せて自分のビジネスに集中したい方は、こちらのページをご参照ください。
社員総会の構成に関する条文
第11条 社員総会は、全ての社員をもって構成する。
ここでいう社員とは、いわゆる従業員のことではなく、社員総会において議決権を有する者のことをいいます。
社員総会は特定の社員だけで構成されるのでなく、議決権を有する全ての社員をもって構成されるという法人法上のことを明示している規定です。
会員制度を採用している一般社団法人については、各種会員を社員としていない場合は社員総会の構成員とはなりません。
社員全員が社員総会に出席する必要があるか
社員総会は全ての社員をもって構成されますが、これは社員総会に社員全員が出席しなければならないことを意味しません。
普通決議であれば、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の議決権の過半数を有する社員が出席があれば足りることになります(法人法第49条1項)。
定款に定めることにより、社員総会の決議をするには社員全員の出席、賛成が必要とすることも可能です。
社員総会の権限に関する条文
第12条 社員総会は、次の事項について決議する。
⑴ 社員の除名
⑵ 理事及び監事の選任又は解任
⑶ 理事及び監事の報酬等の額
⑷ 貸借対照表及び損益計算書(正味財産増減計算書)並びにこれらの附属明細書の承認
⑸ 定款の変更
⑹ 解散及び残余財産の処分
⑺ その他社員総会で決議するものとして法令又はこの定款で定める事項
この条文は社員総会で決議することができる事項について挙げています。
ところで、理事会のある一般社団法人の社員総会は、法人法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができます(法人法第35条2項)。
上記条文に記載されている事項は、全て「法人法に規定する事項」ですので、定款に定めなくても社員総会で決議をしなければならない事項を列挙していることになります。
定款に定めておくことにより、少なくともこれらは社員総会で決議しなければならないんだなと理事や社員が認識できるというメリットがあります。
社員総会で決議できないこと
理事会のない一般社団法人の社員総会は、法人法に規定する事項及び一般社団法人の組織、運営、管理その他一般社団法人に関する一切の事項について決議をすることができます(法人法第35条2項)。
一般社団法人に関する一切の事項を決議することができるとありますので、決議できる事項の範囲は相当広い権限を社員総会は有しているといえます。
また、前述のとおり理事会のある一般社団法人の社員総会は、法人法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができます(法人法第35条2項)。
社員総会で決議することができない事項も存在します。
社員総会は、社員に剰余金を分配する旨の決議をすることができません(法人法第35条3項)。
社員総会の決議を不要とする旨
法人法で社員総会の決議を要するとされている事項につき、理事、理事会その他の社員総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しません(法人法第35条4項)。
例えば、理事の選任は社員総会の決議を要するところ、これを理事会の決議で行うこと及び行えると定款に定めることはできません。
この趣旨から、社員総会の決議が必要な貸借対照表等の承認を不要とする定款の定めも、その効力を有しません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。