商業登記関係 合同会社の職務執行者を変更するときの手続き(代表社員が日本法人)
合同会社と職務執行者
合同会社の社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、合同会社の業務を執行します(会社法第590条1項)。
ところで、合同会社の社員は、個人だけでなく、法人がなることも可能です。
合同会社において、法人が業務を執行する社員である場合には、社員である法人は、当該業務を執行する社員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の社員に通知しなければなりません(会社法第598条1項)。
この「業務を執行する社員の職務を行うべき者」を職務執行者といいます。
職務執行者と登記事項
業務執行社員である法人が代表社員であるときは、職務執行者の氏名及び住所は登記事項とされています。
職務執行者が辞任する等して交代したときは、その変更登記を申請することになります。
職務執行者の変更登記
代表社員・業務執行社員たる株式会社Xの唯一の職務執行者Aが退任し、新たに職務執行者Bが就任したケースを考えてみます。
ここでは代表社員・業務執行社員たる株式会社Xは代表社員・業務執行社員であり続けることを前提としています。
代表社員・業務執行社員が持分を譲渡して退社するときの手続きについては、こちらの記事をご参照ください。
職務執行者が退任する
変更登記にはその事実を証する書面が求められますので、まずAが職務執行者を退任したことを証する書面が必要となります。
合同会社の定款で職務執行者の任期を別途定めていないときは、職務執行者が退任する原因としては辞任がほとんどです(解任や死亡した場合等もあります)。
辞任を証する書面としては、Aの株式会社Xに対する辞任届に、Aが記名押印したものが一般的です。
職務執行者が就任する
次に、新しく就任する職務執行者Bが選任され、就任を承諾したことを証する書面も必要となります。
職務執行者の選任方法については、こちらの記事をご参照ください。
就任の承諾はBが株式会社Xに行うものですが、就任を承諾したことを証する書面としては、Bの株式会社Xに対する就任承諾書に、Bが記名押印したものが一般的です。
変更登記を申請する
職務執行者が交代したときは、その効力が生じてから2週間以内に変更登記の申請をします。
添付書類の一例は次のとおりです。
- Aの辞任届
- 株式会社Xの取締役会議事録
- Bの就任承諾書
- 代表社員たる法人の登記事項証明書(代表社員たる法人が申請する合同会社と別の法務局の管轄の場合)
※法人等番号を記載することにより添付省略可
この他に、株式会社X職務執行者Bが会社実印を届け出るときは、
- 印鑑届書
- 保証書(Bが株式会社Xの代表取締役であり印鑑登録者である場合は不要)
が必要になるでしょう。
登録免許税は1万円(資本金の額が1億円を超える合同会社は3万円)です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。