はじめに
人手不足の解消やグローバル展開の足掛かりとして、外国人の雇用を検討する企業が増加しています。
しかし、外国人の雇用は、日本人を雇用する場合と異なり、適用される法律や手続きが複雑化する傾向にあります。法的な留意点を理解しないまま採用活動を進めると、意図せず法令違反(不法就労助長等)に問われるリスクも否定できません。
外国人雇用を法的に整理すると、大きく分けて二つの側面が存在します。
「入管法(出入国管理及び難民認定法)」の遵守
その外国人が日本で働くことができる資格(在留資格)を持っているか、または取得できるか。
「労働関係法令(労働基準法等)」の適用
国籍を問わず、適正な労働条件で雇用しているか。
この二つは車の両輪のような関係であり、どちらか一方が欠けても適正な雇用とはいえません。
本記事では、外国人を受入れる検討段階において、企業の担当者が必ず押さえておくべき法務の全体像について、入管法および労働関係法令の視点から解説します。
1. 入管法上の留意点と在留資格制度の理解
外国人雇用の検討において最も特徴的なのが「在留資格(一般的にビザと呼ばれるもの)」の存在です。日本に滞在するすべての外国人は、その活動内容や身分に応じた在留資格を有しています。
在留資格と業務内容の適合性(就労資格の有無)
日本には30種類以上の在留資格がありますが、すべての外国人が自由に働けるわけではありません。以下の3つの区分を理解することが重要です。
活動に制限がない在留資格(就労制限なし)
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
これらの資格を持つ方は、日本人と同様に、職種や労働時間の制限なく就労することが可能です(単純労働も可)。
活動内容が指定される在留資格(就労ビザ)
「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「企業内転勤」「高度専門職」など
許可された範囲内の業務(主に専門的・技術的分野)にしか従事できません。自社の業務内容が、これらの資格要件に合致しているかの確認が必須となります。
原則として就労が認められない在留資格
「留学」「家族滞在」「短期滞在」など
ただし、「留学」や「家族滞在」については、「資格外活動許可」を取得することで、週28時間以内(長期休業期間中は1日8時間以内)のアルバイトが可能になります。
在留カードの確認
実際に雇用を正式に開始する前に、必ず「在留カード」の現物を確認する必要があります。
カード表面の「在留資格」「在留期間(満了日)」を確認するほか、裏面の「資格外活動許可欄」の記載有無も重要なポイントです。
2. 労働法上の留意点
労働法務の観点からは、外国人だからという理由で差別的な取り扱いをすることは禁止されています。
労働基準法第3条(均等待遇)
労働基準法第3条では、国籍を理由として、賃金、労働時間、その他の労働条件について差別的取扱をすることを禁じています。
最低賃金の適用はもちろんのこと、残業代の支払い、有給休暇の付与など、すべての労働条件において日本人従業員と同じ法律が適用されます。
社会保険・労働保険の適用
社会保険(健康保険、厚生年金保険)および労働保険(労災保険、雇用保険)についても、国籍を問わず、加入要件を満たす場合は加入義務が生じます。
「外国人だから加入しなくてよい」「本人が希望しないから加入させない」といった対応は認められない可能性があります。
特に、在留期間更新許可申請の際、入管当局は外国人の公的義務の履行状況(納税や社会保険料の支払い)を厳しく審査する傾向にあります。会社が適切に社会保険に加入させていない場合、結果として本人のビザ更新に悪影響を及ぼすことも考えられます。
3. 採用選考時における注意点
求人募集や面接を行う際にも、法的な配慮が求められます。
求人票の記載内容
職業安定法に基づき、原則として国籍を限定した募集(例:「〇〇人歓迎」「外国人は不可」など)は行うべきではありません。
ただし、業務の性質上、特定の言語能力や海外の商習慣への理解が必要不可欠な場合など、合理的な理由がある場合に限り、その能力を要件とすることは可能です。
採用内定と在留資格の条件付け
就労ビザが必要な外国人を採用する場合、たとえ内定を出しても、入管から在留資格の許可が下りなければ働くことはできません。
そのため、雇用契約書には「在留資格が許可されることを条件として採用する(停止条件付雇用契約)」旨の条項を設けることが一般的です。
4. 雇用後の行政への届出義務
外国人を雇用した際(雇入れ時)および離職した際(離職時)には、すべての事業主にハローワーク(公共職業安定所)への届出が義務付けられています(労働施策総合推進法)。
雇用保険の被保険者でないアルバイト等の外国人を雇用する場合でも、届出は必要です。
この届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合には、罰則の対象となる可能性があるため、確実な履行が求められます。
まとめ
外国人雇用において企業が最も避けるべきは「不法就労」への関与です。
不法就労とは、在留資格を持たない者が働いたり、許可された範囲を超えて働いたりすることを指します。
事業主が、知らなかったとしても、過失により不法就労者を働かせた場合には、「不法就労助長罪(入管法第73条の2)」に問われる可能性があります。これには、5年以下の懲役または500万円以下の罰金という重い罰則が規定されています。
したがって、受入れを検討する段階から、「自社の業務でビザが取れるのか」「この応募者の在留カードは正規のものか」といった法的な確認プロセスを、社内の採用フローに組み込むことが重要と言えます。
