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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

取締役ごとに異なる任期を定めることのメリット・デメリット

取締役と任期

株式会社の取締役には、必ずその任期があり、任期が満了すると退任します(再任可)。

取締役の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、となっています(会社法第332条1項)。

この取締役の任期は、株主総会の決議や定款の定めにより短縮することができます(会社法第332条1項ただし書き)。

また、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)においては、定款に定めることにより、上記任期の2年の箇所を10年まで伸長することも可能です(会社法第332条2項)。

任期を変更する

株式会社ではその定款において、取締役の任期を定めていることが一般的です。

定款に取締役の任期に関する規定がない場合は、取締役の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなります。

任期を上記よりも伸長するには、定款を変更することによって行うことになりますので、具体的には株主総会の特別決議で定款を変更する方法によって行います。

取締役ごとに異なる任期を設定する

取締役の任期につき、取締役全員に同じ規定を適用している株式会社がほとんどです。

取締役ABCの3名がいたときに、取締役の任期を「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」としているのであれば、取締役ABC全員にこの任期が適用されます。

任期を管理しやすくすることを目的として、取締役の任期が終わるタイミングを揃えるために「増員規定」や「補欠規定」を定款に定めている会社も少なくありません。

一方で、取締役ごとに異なる任期を設けることも可能とされています。

取締役Aの任期は2年、取締役Bの任期は5年、取締役Cの任期は10年といったような任期の定め方です。

取締役ごとに異なる任期とするケース

取締役ごとに異なる任期を設けるケースとしてはどのようなものがあるでしょうか。

実例として見かけることはあまりありませんが、活用例を検討してみます。

複数名で創業するケース

2-3名で創業するようなケースにおいて、出資者がA、取締役がABCのような場合、取締役ごとに任期を変えるメリットもあるでしょうか。

例えば、取締役Aの任期は10年、取締役BCの任期は1年という定め方が考えられます。

取締役Aは自分の会社(Aが100%出資)なので取締役を退任する予定がなく任期は10年としておき、一方で取締役BCの任期を短くすることにより定期的に取締役としての資質をチェックすることができます。

取締役BCの任期も10年としてしまい、いざ創業してみたら方向性の違いや能力的な問題から、彼らを取締役から解任したいとなっても、正当な理由がなければ解任後に損害賠償を請求されるリスクが生じてしまいます(会社法第339条2項)。

≫株式会社を設立するときに、出資者と取締役が別の人になる場合の取締役の任期

試験的に取締役を追加で選任するケース

いわゆる同族会社において、親族以外の従業員を取締役として選任するようなケースではどうでしょうか。

親族である取締役の任期は10年、親族以外の取締役の任期はそれよりも短くすることが考えられます。

理由としては、上記と同様に、当該取締役を定期的にチェックすることができる点と、解任による損害賠償の請求リスクを下げられる点が挙げられます。

後継者候補を取締役に選任するケース

会社の後継者候補を取締役として選任するケースにおいても、当該後継者候補の取締役としての任期を短くしておくことが考えられます。

理由、メリット等は、上記と同様です。

既に退職する予定が決まっているケース

取締役の任期が4年以内に終了する~となっている株式会社において、新たに選任する取締役が2年しかいないことが最初から分かっているような場合は、当該取締役の任期のみ2年としておくことが考えられます。

同様に、長年取締役の職に就いてきた人が再任するケースで、当該取締役が年齢的な問題であと2年だけしか取締役をやらないような場合も、当該取締役の任期のみ2年としておくと良いでしょう。

とりあえず他の取締役と同じく4年任期にしておき、後で辞任してもらえば良いという考え方もあるかもしれませんが、2年後に実際に辞任してもらえるかどうかは、2年後になってみないと分かりません。

種類株式ごとに選任する取締役の任期を変える

種類株式の種類よって、その選任される取締役の任期を変えるようなケースが考えられます。

種類株式の内容として、当該種類株式の株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すると定められるところ(会社法第108条2項9号)、各種類株主総会によって選任された取締役の任期を異なるものとします。

≫役員(取締役・監査役)選任権付種類株式

例えば、A種類主総会で選任された取締役の任期は2年、B種類株主総会で選任された取締役の任期は5年といったような定め方です。

ただ、このような任期の定め方は、実際利用されているケースとしては少ないかもしれません。

取締役ごとに異なる任期とするデメリット

取締役ごとに異なる任期とするデメリットはあるでしょうか。

一つ目は、任期の管理に関するコストの上昇が考えられます。

任期の定め方によっては、毎年取締役の誰かを選任(再任)する必要が生じる可能性があり、そうであればその都度、役員変更の登記をしなくてはなりません。

二つ目は、任期に差を設けることによって生じる心理的な問題でしょうか。

任期に差を設けることにより、任期の長い人に対して任期の短い人が不満を持つ可能性があり、任期に差を設けることの理由をしっかり説明しておく必要があるかもしれません。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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