商業登記関係 特例有限会社は株式の譲渡制限規定を変更することができるか
特例有限会社と株式の譲渡制限
特例有限会社の定款には、その株式を譲渡するには当該特例有限会社の承認を要する旨の定めがあるものとみなされています(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」といいます)第9条1項)
加えて、特例有限会社の株主がその株式を譲渡により取得するときは、その譲渡につき当該特例有限会社が承認したものとみなす旨の定めもあるものとみなされています。
このように特例有限会社の株式は、当該特例有限会社の承認なく、第三者に対して譲渡することができないことになっています。
(株式の譲渡制限の定めに関する特則)
整備法第9条1項特例有限会社の定款には、その発行する全部の株式の内容として当該株式を譲渡により取得することについて当該特例有限会社の承認を要する旨及び当該特例有限会社の株主が当該株式を譲渡により取得する場合においては当該特例有限会社が会社法第136条又は第137条第1項の承認をしたものとみなす旨の定めがあるものとみなす。
譲渡制限規定の内容
平成18年(2006年)5月1日の会社法施行時に、特例有限会社の登記簿につき、株式の譲渡制限に関する規定の欄には、次の内容が記録されました。
当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得する場合においては当会社が承認したものとみなす。
譲渡制限規定を変更できるか
例えば、特例有限会社の取締役が次のように考えたとします。
- 株式の譲渡承認は代表取締役だけで行いたい
- 株主への株式の譲渡についても、会社の承認を必要としたい
しかし、特例有限会社においては、株式の譲渡制限に関する規定を変更することができません(整備法第9条2項)。
整備法第9条2項
特例有限会社は、その発行する全部又は一部の株式の内容として前項の定めと異なる内容の定めを設ける定款の変更をすることができない。
株式会社へ組織変更
特例有限会社においては、株式の譲渡制限規定を変更できないことは上記のとおりです。
それでもどうしても変更したい場合は、株式会社へ組織変更をすることにより解決することができます。
しかし、譲渡制限規定を変更するためだけに、株式会社へ組織変更をするということはなかなかありません。
何かしらの理由で特例有限会社から株式会社へ組織変更するときに、会社の事情に合わせて、譲渡制限規定の内容についても検討をしてみてください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。