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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

株主間の株式譲渡については会社の承認を不要とする定款の定めにリスクはあるか

株式会社と株式の譲渡制限規定

株式会社は、その発行する全部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すると定めることができます(会社法第107条1項)。

譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要するとする定款の定めを、株式の譲渡制限規定といいます。

上場会社等の一部の株式会社を除き、公開会社とするメリットはほとんどありませんので、多くの株式会社において定款に株式の譲渡制限規定が設けられています。

その他、株式の譲渡制限規定の内容についてはこちらの記事をご参照ください。

≫株式会社の株式の譲渡制限の定めとその注意点

株主に譲渡するときは会社の承認を不要とする定め

株式の譲渡制限規定の定め方として、当該株式会社の他の株主に譲渡するときは、当該株式会社の承認を不要とするという定め方も可能です。

当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。ただし、当会社の株主に譲渡する場合には、承認をしたものとみなす。

この規定がある株式会社においては、株主がABCと3名いる場合、Aが自分の保有する株式をBに譲渡するときは、当該株式会社の承認を得ることなく行うことができます。

インターネットにあるサンプル定款

会社を設立するときに、インターネットでサンプル定款を探し、それを自社に当てはめて使用される方は少なくありません。

≫日本公証人連合会の定款記載例≫新橋公証役場の定款書式例≫ジェトロの定款例では、株主に対する株式の譲渡については会社側の承認を不要としています。

これ自体は何も悪いことではなく、1人会社の場合はこれで全く問題ありません。

株主が3名以上いる、あるいはこれから株主が増えることが予定されている株式会社においては、この規定のリスクを把握しておく必要があります。

株主間で勝手に株式が譲渡されるリスク

株主が、他の株主に対して株式を譲渡するときに発行会社の承認を不要とするリスクはどのようなケースで顕在化するのでしょうか。

株主が1名の場合は、問題になり得ません。

株主が、他の株主に対して株式を譲渡するということは現在の株主が譲渡するときには起こり得ないからです(その後、株主が複数になった場合は別)。

株主が2名の場合

株主が2名の場合も、他の株主に対して株式を譲渡するときに発行会社の承認を不要とするリスクは低いと言えるかもしれません。

株主間で株式を譲渡するときは、譲渡承認機関が株主総会の決議であれば、譲渡人も譲受人も株主総会で賛成するため、わざわざ株主総会を開催するという手間が省けます。

一方で、譲渡承認機関を取締役会の決議としている株式会社はどうでしょうか。

取締役XYZ、外部株主A(51%)、株主X(49%)という構成で、株主Aの賛成だけでは特別決議を成立させられないような仕組みにしているケースで、株主Xが勝手に外部株主Aに譲渡してしまうと、当初YZが想定していた仕組みが崩壊する、ということがあるでしょうか。

株主が3名の場合

株主構成がA(34%)、B(33%)、C(33%)、譲渡承認機関が代表取締役Aという株式会社において、AとBの利害が一致しているため株主総会の普通決議・特別決議を通すことができていたとします。

ここでBがCに株式を譲渡すると、A(34%)、C(66%)となり、Cの賛成で普通決議要件を満たすことになるほか、株主総会にAとCが出席する限り、AとCが共に賛成しないと特別決議が成立し得ない状況となります。

可能性という話だけで言えば、A(97%)、B(2%)、C(1%)という株主構成の株式会社において、BがCに株式を譲渡することにより、Cに会計帳簿閲覧請求権といった少数株主権が生じるということもあり得ます。

≫少数株主権

株主が4名以上の場合

株主が4名以上の場合も、上記と考え方は同様です。

株主構成がA(60%)、B(20%)、C(10%)、D(10%)という株式会社であればAともう1名の賛成で特別決議を成立させられるところ、BがCDから株式を譲り受ければ、Bが株主総会に出席する限りBの賛成無くして特別決議を成立させることはできなくなります。

これは株主が5名でも6名でも、色々なケースが想定されるでしょう。

会社設立と株主構成

株式会社を新しく設立するときに、今後もずっと株主1名であるような会社であればこの辺りは気にする必要がないかもしれません。

一度株式を発行すると、株式は株主の財産となるため以降は勝手に回収をすることができず、株主には多くの権利が生じることになります。

そのため、設立時から株主が複数いるような会社においては、株主構成と定款の内容についてはよく検討しておいた方がいいでしょう。

≫創業時に株式を50%:50%で保有するリスクを考える
≫設立時の協力者全員に株式を持たせるべきか


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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