商業登記関係 有限会社から株式会社へ組織変更(商号変更)手続き
有限会社と株式会社
有限会社とは、会社法施行(平成18年5月1日)前に設立をすることができた法人形態の一つです。
資本金が300万円以上、出資者が50名以内、取締役1名以上という条件で設立することができたため、会社法施行前の株式会社の設立に比べて設立しやすいこともあり、よく利用されていました(株式会社は資本金1,000万円以上、取締役3名以上、監査役1名以上)。
会社法施行後は、有限会社は特例有限会社として、株式会社の一つの形態として存続することになりました。しかし、有限会社は株式会社とは異なる特徴を持っています。
有限会社の特徴
有限会社には、株式会社にはない特徴があります。
新しく設立することができません。
平成18年5月1日以降においては、有限会社を新しく設立することができません。有限会社というだけで、(活動の有無は別にして)10年以上存続している会社ということになります。
役員の任期がありません。
株式会社は、取締役や監査役の任期を定めなければならず、その期間は一般的には取締役1年~10年、監査役4年~10年となっています。
任期を迎えた取締役や監査役は、同じ取締役が続投(再任・重任)する場合でも選任手続きと、その登記手続きが必要となります。
みなし解散がありません。
株式会社は12年間、一般社団法人は5年間、何の登記申請も行われていない会社・法人は解散したものとみなされて登記簿を閉鎖されてしまいますが、有限会社にはこの「みなし解散」がありません。
決算公告が不要です。
株式会社は、定時株主総会後に遅滞なく決算公告を行わなければなりませんが、有限会社においては決算公告は不要です。
株主間での株式譲渡は自由に行うことができます。
有限会社には、次のような株式譲渡制限規定があるとみなされています。
- 当会社の株式を譲渡により取得することについて当会社の承認を要する。当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得する場合においては当会社が承認したものとみなす。
有限会社の株主は、株主間では株式の譲渡を自由に行うことができますので、株主が複数いるときはその持分比率が会社の関与なしに変わる可能性があります。
取締役会、会計参与、会計監査人を置くことはできません。
有限会社に置くことのできる機関は取締役と監査役です。取締役会や会計参与、会計監査人を置くことはできません。
組織再編時に一定の制限があります。
吸収合併や会社分割などの組織再編を行う際に、次のとおり有限会社は当事会社になれない場面が多いです。例えば、有限会社を吸収合併の存続会社にするのであれば、有限会社から株式会社へ組織変更をしなくてはなりません。
- 有限会社は吸収・新設合併の存続・新設会社となることはできません。
- 有限会社は吸収・新設分割の承継・新設会社となることはできません。
- 有限会社は株式交換の親会社・子会社となることはできません。
- 有限会社は株式移転の親会社・子会社となることはできません。
有限会社から株式会社への移行手続き
有限会社から株式会社へは、株主総会において商号変更にかかる定款変更の決議と登記申請を行うことによって移行します。登記申請は、単に商号変更の登記申請ではなく、①株式会社の設立登記②有限会社の解散登記を同時に提出します。
1. 有限会社の株主総会で定款変更の決議
現在の定款を、株式会社移行後の定款に変更するために株主総会の特別決議が必要です。有限会社の特別決議要件は次のとおりです。
- 総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合はその割合以上)であって、当該株主の議決権の4分の3以上の多数の賛成
譲渡制限規定をどうするか、取締役の任期をどうするか、取締役会や監査役を置くか、発行可能株式総数を増やしておくか、など、商号以外の部分も検討します。
2. 法務局に申請書を提出
管轄法務局へ①株式会社設立登記②有限会社解散登記を同時に連件で提出します。
役員の任期
有限会社の取締役が継続して株式会社の取締役となるときは、有限会社の取締役就任期間を含めて任期を計算します。
例えば、株式会社の取締役任期を10年とするときに、既に有限会社の取締役に10年以上の期間就任しているのであれば、株式会社への移行と同時に一度任期が切れることになります。
登録免許税
登録免許税は、株式会社設立の登記については資本金の額の1000分の1.5、この金額が3万円に満たない場合は3万円、有限会社解散の登記については3万円、合計金額は6万円以上です。
なお、株式会社への移行直前における資本金の額を超える部分については、資本金額の1000分の7となります。
有限会社から株式会社への組織変更手続き費用手続き費用
当事務所に有限会社から株式会社への組織変更手続きをご依頼いただいた場合の費用例につきましては、こちらの記事をご参照ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。