商業登記関係 ハイブリッド型バーチャル株主総会(参加型・出席型)
株主総会の開催
株式会社は、定時株主総会を毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければなりません(会社法第296条1項)。
また、株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができます(会社法第296条2項)。この、定時株主総会以外の株主総会を臨時株主総会といいます。
株主総会の流れは一般的に、取締役会で株主総会の招集を決議し、株主に対して招集通知を送り、株主総会を開催し、出席した株主が議決権を行使します。
株主総会のみなし決議
株主総会を実際に開催しなくても、株主総会の決議を得る方法があります。
取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案し、当該提案された事項につき議決権を行使することができる株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされます(会社法第319条1項)。
この方法は、特に株主が少数の会社においては良く採用されている印象です。
≫みなし株主総会(書面決議・みなし決議)-会社法第319条1項
株主総会の開催方法
株主総会と言えば、役員や株主が一堂に会して株主総会を開催する方法がよく用いられていました(これをリアル株主総会といいます)。
ところが、新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに、一堂に会することなく株主総会を行う方法が模索された結果、2022年1月現在、次の4つの方法が認められています。
- リアル株主総会
- ハイブリッド参加型バーチャル株主総会
- ハイブリッド出席型バーチャル株主総会
- バーチャルオンリー型株主総会
ところで、株主総会の(普通)決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が「出席」し、「出席」した当該株主の議決権の過半数をもって行います(会社法第309条1項)。
上記の株主総会のタイプ分けは、この「出席」の方法が一つのポイントとなります。
以下、それぞれのタイプの株主総会の具体的な開催方法ではなく、概要について記載しています。
1. リアル株主総会
役員や株主等の株主総会の出席者が、一堂に会する物理的な場所において開催される株主総会のことをいいます。
物理的な場所において開催されますので、本店の会議室、どこかの会場を借りる、代表取締役の自宅等、物理的な場所が必要です。
株主が複数名いる会社において、書面によって議決権を行使したり、議長たる代表取締役に議決権の行使を委任する等して、会場には代表取締役しか居ない株主総会も、分類的にはリアル株主総会です。
2. ハイブリッド参加型バーチャル株主総会
ハイブリッド参加型バーチャル株主総会とは、リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の開催場所に居ない株主が、インターネット等の手段を用いて審議等を傍聴することができる株主総会のことをいいます。
次のハイブリッド出席型バーチャル株主総会との違いは、参加型は、インターネット等の手段を用いて審議を傍聴している株主は、株主総会への会社法上の「出席」者とは認められない点です。
出席しているわけではないため、当該株主には議決権の行使や動議の提出を行うことはできません。
会場に行って「出席」しない株主が議決権を行使するには、一例として、事前に書面や電磁的方法によって議決権を行使すること(会社法第298条1項)や、委任状を用いて代理人による議決権行使を行う必要があります。
株主は事前に何らかの形で賛成に票を投じるけれども、株主総会の様子を確認したい、あるいは議案に対する役員の説明を確認したいという株主のニーズに応えることができます。
3. ハイブリッド出席型バーチャル株主総会
ハイブリッド出席型バーチャル株主総会とは、リアル株主総会の開催はするが、リアル株主総会の開催場所に居ない株主が、インターネット等の手段を用いて、株主総会に会社法上の「出席」をすることができる株主総会のことをいいます。
開催場所に居ない株主も「出席」することができるため、会場に居ない株主も、議決権の行使や動議の提出を行うことができます。
定足数や議決権のカウント、会社側や株主側の通信環境のトラブルも考えられることから、株主が少数で賛成多数で見込まれるような状況であれば、書面決議又はリアル株主総会(事前に委任状等を回収)で行い、準備ができるのであればハイブリッド参加型バーチャル株主総会を採用してみるという形でも良いかもしれません。
4. バーチャルオンリー型株主総会
バーチャルオンリー型株主総会とは、リアル株主総会を開催することなく、取締役や株主といった出席者がインターネット等の手段を用いて株主総会に出席する株主総会のことをいいます。
2022年1月現在、一定の条件を満たした上場会社のみ、バーチャルオンリー型株主総会を開催することが可能です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。