商業登記関係 会計監査人設置会社の定めを廃止する手続きと登記
会計監査人設置会社
次のいずれかに該当する株式会社は、会計監査人を置かなければなりません。
- 定款に会計監査人を置くと定めている会社
- 委員会設置会社
- 大会社
※最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上又は負債の部に計上した額の合計額が200億円以上
会計監査人を設置している会社が会計監査人を廃止したいというニーズがあったときに、どのような手続きで廃止することができるのでしょうか。
このページでは、対象となる株式会社につき非公開会社であることを前提としています。
会計監査人を廃止するパターン
会計監査人の設置義務が無い会社において、上場準備会社を除き、定款に定めを置くことで任意に会計監査人を設置している会社は少ないかもしれません。
よくご相談をいただくパターンは、増資によって資本金5億円以上となり大会社のため会計監査人を設置していた会社が、減資によって資本金1億円以下となったことにより、定時株主総会で会計監査人を廃止するというものです。
事業年度末の資本金の額が5億円未満(税務的なメリットから1億円以下とすることが多い)になり、当該事業年度に係る定時株主総会で計算書類が報告(会社法第439条)された時点で、会社法上の大会社ではなくなります。
そのタイミングで、定款変更の決議を行い、会計監査人を廃止するという流れです。
当該定時株主総会で定款変更の決議を行わない
大会社から外れても会計監査人を置くことは可能です(上記「1.」のケースに該当)。
大会社から外れることになる定時株主総会において、会計監査人を廃止しなかった場合はどうなるでしょうか。
この場合、会計監査人は置き続けることになり、かつ、会計監査人の選任の決議を行わなかった場合は、自動的に再任されたものとみなされますので(会社法第338条2項)、会計監査人の重任登記を行うことになります。
会計監査人を廃止する
会計監査人を廃止するには、会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止する方法により行いますので、株主総会の特別決議によって定款を変更します。
種類株式を発行している会社で、当該種類株式に拒否権条項(定款を変更するには当該種類株主による種類株主総会の決議が必要)が付いている場合は、当該種類株主総会の決議も行います。
大会社がその定義から外れても、自動的に会計監査人を置く旨の定款の定めが廃止されるわけではありませんのでご注意ください。
株主総会の議題例
定時株主総会の議題例は次のとおりです。
- 報告事項:事業報告及び計算書類報告の件
- 決議事項:議案:定款一部変更の件
定款一部変更の件の内容は、別紙のとおり変更する等として変更後の定款を合綴する方法と、新旧対照表を記載して変更箇所が分かるようにする方法がありますが、どこを変更したのか分かりやすい後者の方が個人的には好みです。
なお、法律上はどちらでも問題ありません。
登記申請
定款変更の効力発生日から2週間以内に管轄登記所へ登記申請を行います。
定款変更の効力発生日を株主総会の翌日以降にすると、会計監査人の重任が生じますので、株主総会の開催日=定款の効力発生日とすることがほとんどでしょう。
登記すべき事項は「会計監査人設置会社の廃止」「会計監査人の退任」です。
この登記の登録免許税は、会計監査人を置く旨の廃止分が3万円、会計監査人の退任分が1万円(資本金の額が1億円を超える会社は3万円)です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。