商業登記関係 株式会社の清算手続きの内容とスケジュール例
株式会社が解散したら清算手続きへ
株式会社が解散事由に該当することにより解散をしたとしても、すぐに会社が消滅してなくなるわけではありません。
清算とは、会社に残っている事務を完了し、未回収の債権を取り立て、未払いの債務を弁済し、残った会社の財産を株主へ分配する手続きのことをいいます。
清算手続きでは、官報公告により債権者の通知を行ったあと2ヶ月の申し出期間を設ける必要があるため、少なくとも解散から2ヶ月間は清算手続きは終えることができません。
なお、債務超過の会社が解散するときは、特別清算という手続きになり裁判所の監督の下で手続きを行っていくことになります。
親会社や代表取締役からの貸付金しか債務がない会社においては、親会社や代表取締役が債権放棄をすることにより特別清算を回避するケースがほとんどでしょう。
以下は、債務超過ではない会社の清算手続きの流れです。
清算手続きのスケジュール
清算手続きの一般的なスケジュール例は次のとおりです。
清算人会非設置、債務超過ではない、従業員無し、比較的財産が少ない会社を前提としています。
8月1日 | 株主総会の開催(解散、清算人選任) 官報公告の申込み |
登記申請(2週間以内) | |
8月1日以降 | 会社財産の調査 財産目録の作成 貸借対照表の作成 現務の結了、財産の換価 債権の取り立て |
8月24日 | 官報に解散公告掲載 知れたる債権者へ個別催告 |
株主総会の開催(解散時の財産目録の承認) | |
税務署へ確定申告(解散後2ヶ月以内) | |
債権者保護手続きの期間満了 | |
債務の弁済 残余財産の分配 |
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株主総会の開催(決算報告の承認) | |
10月30日以降 | 登記申請(2週間以内) 税務署へ確定申告、異動届の提出 |
①解散事由の発生、解散・清算人選任の登記申請
株主総会の解散決議、存続期間の満了など解散事由が発生をしたら、解散・清算人選任の登記申請をします。
株式の譲渡承認機関を取締役会としている取締役会設置会社は、その承認機関の変更登記をした方がいいとされています。
ただし、譲渡制限規定の変更登記を申請しなくても、解散登記は受理される扱いとなっています。
②官報公告と債権者への各別催告
債権者に対して債権の申し出をするように官報に公告をし、知れたる債権者には個別に催告をします。
知れたる債権者がいないときは官報公告だけで問題ありません。
官報公告(解散)は申し込みから掲載まで10営業日程度かかります。
もし解散日の翌日に官報へ掲載をするのであれば、解散決議をする株主総会の開催日前に申し込みをしておく必要があります。
解散公告の例は次のとおりです。
当社は、平成28年9月19日開催の株主総会の決議により解散いたしましたので、当社に債権を有する方は、本公告掲載の翌日から二箇月以内にお申し出下さい。
なお、右期間内にお申し出がないときは清算から除斥します。
東京都港区新橋一丁目7番10号
汐留太郎株式会社
代表清算人 汐留太郎
③解散日の財産目録、貸借対照表の承認(株主総会)
解散日の財産目録、貸借対照表を清算人が作成し、株主総会の承認を得ます。
この決議は普通決議でOKです。
財産目録、貸借対照表が株主総会で承認された後は、税務署へ確定申告を行います。
④債権の取立て、債務の弁済
未回収の債権を回収したり、会社財産を換価したりします。
なお、債権の申出期間中(公告・催告から2ヶ月間)は、債権者及びその総債権額が確定していないため、一部の債権者に弁済をすることはできません(会社法第500条1項)。
債権の申出期間が経過した後に、債権者へ弁済をします。
⑤残余財産の分配
債権者に対して債務を全て弁済しても会社に財産が残っている場合は、当該残余財産を株主に分配をします。
残余財産の分配に関する事項の決定は清算人の決定(清算人会の決議)によって行います(会社法第504条1項)。
種類株式やいわゆる属人的株式の定めがない限りは、持株数に応じて均等に分配をします(会社法第504条3項)。
⑥決算報告の作成
残余財産の分配が終わった後は、清算人が決算報告を作成します(会社法第507条1項)。
決算報告の内容は次のとおりです(会社法施行規則第150条)。
- 債権の取立てや資産の処分などにより得た収入の額
- 債務の弁済や諸費用の支払いなどの費用の額
- 残余財産の額
- 1株当たりの分配額
⑦決算報告の承認(株主総会)
決算報告を株主総会で承認します。この決議要件は普通決議です。
この承認が得られれば株式会社は清算が結了し、消滅することになります。
⑧清算結了の登記申請
次の書類を添付して、清算結了の登記申請をします。登録免許税は2,000円です。
- 株主総会議事録
- 株主リスト(平成28年10月1日以降必要となりました)
- 決算報告書
清算結了後、税務署へ確定申告、異動届を提出します。
解散、清算に関する税務
解散、清算に関する税務のご相談は、司法書士ではなく税理士が承ります。
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この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。