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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

事業年度を変更したときに、会計監査人の任期が終了するタイミング

会計監査人と任期

会計監査人には任期があり、その任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなっています(会社法第338条1項)。

会計監査人は選任された以降、定時株主総会の度にその任期を満了しますが、当該定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなされるという特徴があります(会社法第338条2項)。

≫定時株主総会と会計監査人の重任登記

なお、特例有限会社は会計監査人を置くことができません。

事業年度の変更

事業年度は定款の任意的記載事項であり、多くの会社において事業年度は定款に記載されています。定款に記載された事業年度を変更するときは、株主総会の特別決議によって行います。

事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度の末日は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)1年6ヶ月を超えることができません(会社計算規則第59条2項)。

≫株式会社の事業年度(決算期)を変更する手続き

事業年度の変更と会計監査人の任期

事業年度の末日を変更すると、通常は定時株主総会を開催する時期も変わります。

事業年度の末日が3月31日の株式会社は、定時株主総会を5月又は6月に開催することが多いところ、事業年度の末日を8月31日に変更すると、それ以降は定時株主総会を10月又は11月に開催することになるでしょう。

定時株主総会が開催される時期が変更されると、現在就任している会計監査人あるいはこれから就任する会計監査人の任期にも影響があります。

選任後1年以内に終了する事業年度の不存在

事業年度の末日を変更するときは、最長で当該事業年度の前事業年度の末日の翌日から1年6ヶ月後を末日と定めることができることから、会計監査人の選任時から1年以内に終了する事業年度が存在しないということがあり得ます。

例えば、3月31日を事業年度の末日とする株式会社が、2022年6月30日の定時株主総会において、事業年度の末日を8月31日と変更した上で、2022年4月1日から始まる事業年度の末日を2023年8月31日とするようなケースです。

この場合、会計監査人が選任(みなし再任含む)された2022年6月30日から1年以内に終了する事業年度がありません。

事業年度を変更した後に会計監査人を選任するケース

事業年度を変更した後に会計監査人を選任した場合は、当該会計監査人の任期は、変更後の事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとなります。これは、変更後の事業年度の末日が当該変更時から1年以内に終了しなくても結論は変わりません。

会社の意図としては、変更後の事業年度を前提として会計監査人を選任していると考えられるためです。

3月31日を事業年度の末日とする株式会社が、2022年6月30日の定時株主総会において事業年度の末日を8月31日と変更+会計監査人を選任(みなし再任含む)し、2022年4月1日から始まる事業年度の末日を2022年8月31日としたときは、当該会計監査人の任期は2022年6月30日から、事業年度(2022年4月1日~2022年8月31日)に関する定時株主総会の終結の時までとなります。

3月31日を事業年度の末日とする株式会社が、2022年6月30日の定時株主総会において事業年度の末日を8月31日と変更+会計監査人を選任(みなし再任含む)し、2022年4月1日から始まる事業年度の末日を2023年8月31日としたときは、当該会計監査人の任期は2022年6月30日から、事業年度(2022年4月1日~2023年8月31日)に関する定時株主総会の終結の時までとなります。

会計監査人を選任した後に事業年度を変更するケース

会計監査人を選任した後に事業年度を変更した場合は、当該会計監査人の任期は、変更後の事業年度が選任後1年以内に終了しないときは、当該事業年度の変更の効力が生じた時までとなります。

3月31日を事業年度の末日とする株式会社が、2022年8月1日の臨時株主総会において事業年度の末日を8月31日と変更した上で、2022年4月1日から始まる事業年度の末日を2022年8月31日としたときは、2022年6月30日の定時株主総会で選任された会計監査人の任期は、事業年度(2022年4月1日~2022年8月31日)に関する定時株主総会の終結の時までとなります。

3月31日を事業年度の末日とする株式会社が、2022年8月1日の臨時株主総会において事業年度の末日を8月31日と変更した上で、2022年4月1日から始まる事業年度の末日を2023年8月31日としたときは、2022年6月30日の定時株主総会で選任された会計監査人の任期は、当該事業年度の変更の効力が生じた時までとなります。

なお、後者の場合、2022年8月1日の臨時株主総会において再任されたものとみなされるわけではないこと、及び会計監査人には権利義務の規定もないことから、事業年度の変更だけではなく会計監査人の選任議案も忘れに盛り込んでおきます。

任期が1年を超える会計監査人の任期を附則に記載しておく

事業年度を変更することによって会計監査人の任期が1年を超えることになる場合は、定款の附則にその旨を記載しておくと明確でしょう。

第●●条 第■■条の規定にかかわらず、2022年6月30日付の定時株主総会において選任された会計監査人の任期は、2023年8月31日に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとする。なお、本条は当該会計監査人の退任をもってこれを削除する。

この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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