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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

A種優先株式発行後、一部の普通株主の保有する株式を無議決権株式に変更する

株主の一部が保有する種類株式の内容を変更したい

投資家から種類株式を用いて資金調達をした後に、普通株式の保有者(普通株主)の一部につきその株式の種類を変更したいというニーズがあったとします。

株主
株式の種類
株式数
取締役X
普通株式
100株
取締役Y
普通株式
100株
取締役Z
普通株式
100株
投資家A
A種優先株式
60株

基本的には、経営者株主がやむを得ない事情によって会社から離れるときは、株主間契約等によってその保有する株式を会社に残る経営者株主に譲渡する等して手放すことが多いかもしれません。

このようなケースで、仮にべスティング条項その他を理由として会社を離れる経営者株主Zが引き続き株式を保有するときに、これをZの了承のもとに無議決権株式にする場合は次の手続きが必要となります。

  1. 取締役会の決議(取締役の決定)
  2. 株主総会の決議
  3. 種類株主総会の決議
  4. Zとの合意、XYの同意
  5. 登記申請
1. 取締役会の決議(取締役の決定)

取締役は、株主総会を招集する場合には、株主総会の日時及び場所等の特定の事項を定めなければなりませんので(会社法第298条1項)、株主総会を開催するまでに当該事項を取締役会の決議(取締役の決定)で定めます。

株主総会が開催型ではなくみなし決議(会社法第319条1項)の場合、株主への提案事項を取締役会の決議(取締役の決定)で定めておくべきかどうかは会社法上明確ではありませんが、取締役が提案者となるのであれば、提案内容を取締役会の決議(取締役の決定)で定めておいた方が無難でしょうか。

2. 株主総会の決議

株主総会において定款の一部変更を特別決議によって行います(会社法第309条2項)。

定款の変更内容としては、普通株式・A種優先株式の他に、無議決権株式(名称は自由に決められます)を設け、無議決権株式の内容として「無議決権株主は株主総会において議決権を有さない。」とすることが考えられます。

また、会社法第199条4項、同法第238条4項、同法第322条2項、同法795条4項(会社法第199条4項の定めがあれば自動的にカバー)に基づく無議決権株式に係る種類株主総会を不要とする定款の定めも入れておいた方が今後の運用がスムーズです。

A種優先株主にとって特に重要となるのが、A種優先株式の剰余金・残余財産の分配その他の事項に係る優先が維持されること、A種優先株式の希釈化防止に関する事項が悪化しない内容となっているかでしょうか。

これらの検討コスト、変更コストがかかる場合、定款を変更しないという結論もあるかと思います。

3. 種類株主総会の決議

株式の種類の追加をするときに、当該追加がある種類の株式の種類株主 (あっているか要確認) に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会が求められます(会社法第322条1項)。

残余財産等の優先順位につき A種優先株式>普通株式=無議決権株式 という内容であれば、無議決権株式の創設はA種優先株主又は普通株主に損害を及ぼす可能性は低そうです。

株主の大多数の同意を得た上で種類株式の追加手続きを行うかと思いますので、どの文言が「損害を及ぼすおそれ」に触れるか不明な場合は、全ての種類株主総会の特別決議を経ておくのが無難かと思います。

4. 発行会社とZの合意、XYの同意

ある株主が保有する株式の種類を変更するには、当該株主と会社の合意と、当該株主が保有する株式のうち種類を変更する株式と同じ株式を保有する株主全員の同意によって行います。

本ケースでは、発行会社とZの合意及びXYの同意によって行うことになります。

≫発行済株式の一部の株式の内容を変更する登記手続き

5. 登記申請

定款変更の効力発生日から2週間以内にその旨の登記申請を行います(会社法第915条1項)。

この登記の添付書類の一例は次のとおりとなり、登録免許税は3万円です。

  • 株主総会議事録、種類株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 発行会社とZの合意書
  • XYの同意書

種類株式に関する登記事項は、こちらの記事をご確認ください。

≫株式会社の種類株式に関する登記事項は何でしょうか


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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