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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

資金調達(エクイティ)をするタイミングで取締役の選任と取締役の任期を短縮する

資金調達と外部取締役

株式会社がVC等の投資家から出資を受ける際に、投資家に取締役1名の指名権を付与するケースがあります。

種類株式を用いた取締役選任権(会社法第108条1項9号)は、やや運用のしづらさがあるためか、契約書ベースで投資家が取締役を指名できるようにしているケースを見かけます。

創業者が株主=取締役である株式会社は、取締役も創業者だけであるため取締役の任期を「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。」としていることが多く、投資家から資金調達をする際に、取締役の任期を「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」に短縮するケースが少なくありません。

以下、取締役の任期につき「選任後●年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」を単に「●年」と記載しています。

取締役の選任と任期短縮

取締役の任期は2年であるところ(会社法第332条1項)、非公開会社においては、これを定款の定めによって伸長することができます(会社法第332条2項)。

非公開会社で、株主=取締役である株式会社は取締役の任期を10年としていることが少なくありませんが、これを2年に変更するには、株主総会の特別決議で定款を変更する方法によって行います。

ところで、取締役の任期を変更すると、変更時点の取締役についても変更後の取締役の任期が適用されます。

2018年に就任した取締役A(任期10年)につき、2023年の株主総会において取締役の任期が2年に変更すると、2018年から2年以上は経過しているため、任期に関する定款変更の効力が発生したタイミングでA任期満了により取締役を退任します。

そのため、任期短縮後もAに引き続き取締役の職務をお願いするのであれば、任期短縮を決議する株主総会で取締役の選任も併せて行う必要があります。

任期切れとなる取締役の再任を忘れた場合

創業時(2018年)から取締役X(代表取締役X)がいたときに、2023年に取締役の任期を2年に短縮した上で外部取締役Yを選任した場合、任期短縮によって取締役Xが任期満了により退任したのにも関わらずXを取締役に再任しなかったのであれば、Xは取締役を退任しYのみが取締役という状況になってしまいます。

これは当初の想定とは異なる結果でしょうから、任期短縮によってXの任期が切れるのであれば、Xの取締役再任決議を忘れないようにしましょう。

上記のケースで取締役Yを選任しない場合でも、取締役Xの任期が切れるのであれば、Xの取締役再任決議が必要なことに変わりはありません。

この再任決議を忘れると、(取締役Yが選任されていない場合は)取締役Xは権利義務取締役となりますので(会社法第346条1項)、取締役の業務執行をすることはできますが、選任懈怠(=会社法違反)の状況となります。

≫株式会社の権利義務取締役、権利義務監査役とは何でしょうか。

代表取締役の選定

取締役会非設置会社において、取締役が複数いる場合には代表取締役を一定の方法で選定する旨を定款で定めている会社が多いかと思います。

≫代表取締役の選定をする方法にはどのようなものがあるか(株主総会?取締役の互選?)

取締役の数が1名であれば原則として取締役=代表取締役となりますが、取締役が複数名いる場合は株主総会の決議によって代表取締役1名を選定する内容の定款となっている場合、新たに取締役を選任することで1人から複数名となったのであれば、定款の定めに従い株主総会の決議によって代表取締役を選定します。

取締役が2名→3名に増える等、新取締役の就任前から取締役が複数名いて、取締役2名の状態で代表取締役を選定済みであれば、3名に増えたときも必要のない限り代表取締役の選定は不要です。

代表取締役に変更がないのであれば代表取締役の重任等の登記は不要であり、代表取締役の変更登記をしないのであれば当該代表取締役を選定した書類は登記申請の添付書類とはなりません(取締役の選任を証する書面は必要です)。

増員取締役の任期

各取締役の任期の終わりは揃っていた方が管理しやすいことから、新任の取締役(Y)の任期も既存の取締役(X)の任期と揃っていることがスムーズです。

任期短縮によって既存の取締役の任期が一度切れるのであれば、新任含め取締役の任期はその時点から揃いますが、任期短縮で既存の取締役の任期が切れない場合、次のいずれかの方法で任期を揃えることが考えられます。

  • 取締役の増員規定を定款に置く(または既にある)
  • 選任した取締役Yの任期を●●までと決議する
取締役の増員規定の例(補欠規定も含む)

任期満了前に退任した取締役の補欠として、又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。

取締役の員数

株式会社には、1人又は2人以上の取締役を置かなければならず(会社法第326条1項)、取締役会設置会社においては、取締役は3人以上でなければなりません(会社法第331条5項)。

定款で取締役の員数を「1名とする」「2名以内とする」のように上限を設けている場合で、それを超える取締役を選任するときは、株主総会の特別決議によって当該定款の定めを変更する必要があります。

取締役の報酬決定

取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(報酬等)につき、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定めます(会社法第361条1項)。

新たに選任した取締役に報酬を付与するのであれば、株主総会の決議によって当該取締役の具体的な報酬額を決定するか、株主総会の決議によって取締役の報酬総額を決定し具体的な各取締役の報酬額を取締役の決定に委任します。

既に以前から株主総会の決議によって取締役の報酬総額を決定していて、新しい取締役の報酬もその枠内に収まるのであれば、取締役の決定等のみで新しい取締役の報酬を決定することができます。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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