相談事例 【相談事例】設立時に設定した種類株式の登記内容が漏れていたので更正登記をする。
株式会社の設立登記と遺漏
株式会社の設立登記をするときは、会社法第911条3項に掲げる事項を登記しなければなりません。
商号や本店の所在場所、資本金の額が登記されずに登記審査が完了するということは考えられませんが(登記申請書から漏れても補正の連絡がくる、はず。)、設立時に設けられることの少ない定款の内容については、登記されずに設立登記が完了してしまっているケースもたまに見かけます。
設立登記の際に登記しなければならなかった事項を登記しなかったときは、当該事項の登記が漏れていたとしてその更正登記をする必要があります。
種類株式と登記事項
株式会社は、会社法第108条1項に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができ、この種類株式は設立時から発行することが可能です。
設立の段階で種類株式を発行するときは、原始定款に種類株式の内容を定め、かつ、各発起人に割り当てる株式の種類及び種類ごとの数を定めることが多いでしょうか。
種類株式を定款に定めたときは発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容(会社法第108条3項7号)を登記し、発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数(会社法第108条3項9号)も登記します。
なお、後者につき、種類株式の内容は定款に定めたけれども普通株式しか発行していないようなケースでも下記のような登記をします。
100株
各種の株式の数
普通株式 100株
各種類の株式の内容
登記する各種類の株式の内容は、次の記事をご確認ください。
会社法第108条1項各号に関する事項は種類株式の内容として分かりやすので登記が漏れることは少ないように思いますが、会社法第322条2項の定めは、種類の株式の章や条文とは離れた場所にある定款の記載の仕方も多く、そのためか登記することが漏れやすいかもしれません。
各種類の株式の内容の更正登記をする
発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の更正登記は、登記申請書と添付書類を管轄法務局へ提出する方法によって行います。
登記されている発行可能種類株式総数は誤っていなくても、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容は一つの枠となっているため、後記のとおり発行可能種類株式総数を含め更正登記をします。
添付書類の一例は次のとおりですが、設立登記の添付書類や管轄法務局によって別の書面を求められる可能性もあり、事前に法務局へ確認しておいた方がが無難ではあります。
- 原始定款
- 上申書
- 登記委任状(登記を代理人に委任する場合)
この登記の登録免許税は2万円です。
普通株式 100株
A種類株式 100株
各種類株式の内容
A種類株式を有する株主は、全ての事項につき株主総会において議決権を有しない。
普通株式 100株
A種類株式 100株
各種類株式の内容
1. A種類株式を有する株主は、全ての事項につき株主総会において議決権を有しない。
2.当会社が、会社法第322条第1項各号に掲げる行為をする場合には、法令に別段の定めがある場合を除き、種類株主総会の決議を要しない。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。