商業登記関係 株主リストQ&A
株主リストの添付、運用開始
平成28年10月1日が過ぎ、以降の一定の商業登記の申請には株主リストの添付が必要となっています。当事務所が申請した商業登記においても、株主リストを添付するケースはありましたが、法務省が提供している株主リストの見本に沿ったものを提出しているため、株主リストが原因で登記申請が補正になったことは今のところありません。
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▼目次
- Q. 株主リストを添付する根拠は何ですか?
- Q. なぜ株主リストが必要となったのですか?
- Q. 株主リストが必要な登記申請は?
- Q. 株主総会の決議が必要な登記とはどんなものがありますか?
- Q. 株主全員の同意が必要な登記とはどんなものがありますか?
- Q. 株主リストが必要ない登記とはどんなものがありますか?
- Q. 社員リストとは?
- Q. 有限会社でも株主リストは必要ですか?
- Q. 合同会社、一般社団法人、NPO法人でも株主(社員)リストは必要ですか?
- Q. 株式会社の設立登記申請では株主リストが必要ですか?
- Q. 株主総会を書面決議で行った場合も株主リストは必要ですか?
- Q. 種類株主総会の株主リストは必要ですか?
- Q. 会計監査人の自動再任の登記申請にも株主リストは必要ですか?
- Q. 株主総会ごとに必要となるのですか?
- Q. 株主リストは誰が作成しますか?
- Q. 吸収合併の消滅会社の株主リストは誰が作成しますか?
- Q. 株主リストの雛形を教えてください。
- Q. 効力発生日が平成28年10月1日以前の登記申請でも株主リストは必要ですか?
- Q. 株主リストの記載事項は?
- Q. 株主の氏名又は名称と住所が英語表記です。訳文は必要ですか?
- Q. 株主が法人です。株主たる法人の代表者の記載は必要ですか?
- Q. 株主リストと株主名簿の記載事項の違いは?
- Q. 株主リストの代わりに株主名簿を添付してもいいですか?
- Q. 株主リストには株主全員の記載が必要ですか?
- Q. 議決権数上位10名を記載する予定です。10位が2名いますが…。
- Q. 当社には自己株式があります。株主リストへの記載は必要ですか?
- Q. 株主総会に欠席した株主がいます。株主リストへの記載は必要ですか?
- Q. 株主総会で議案に反対した株主がいます。株主リストへの記載は必要ですか?
- Q. 株主リストに押す印鑑は何ですか?
- Q. 株主リストに記載されている株主の印鑑は必要ですか?
- Q. 株主の氏名や住所も法務局の審査対象ですか?
- Q. 株主総会後に株主が変わりました。どの株主を記載すればいいですか?
- Q. 株主の住所を正確に把握していないのですが・・・。
- Q. 株主総会時(基準日)に株主が死亡していることが判明しました。
株主リストQ&A
株主リストはその運用が開始したばかりですので、これから色々と運用における疑問点や先例が出てくるとは思いますが、今の段階で分かっている点をQ&A形式でまとめてみました。
Q. 株主リストを添付する根拠は何ですか?
A. 商業登記規則第61条第2項及び同条第3項です。
Q. なぜ株主リストが必要となったのですか?
A. 虚偽の登記申請がなされることを防止し、商業登記の真実性の担保を図るためとされています。
平成27年に一定の取締役や監査役の選任登記に運転免許証などの本人確認証明書が必要になったように法改正されましたが、より商業登記の真実性を高める方向へ向かっているようですね。
Q. 株主リストが必要な登記申請は?
A. 主に株式会社がする登記申請のうち、登記すべき事項につき株主総会の決議または株主全員の同意を要するときです。
その他に、投資法人と特定目的会社がする登記申請のうち、上記に類似するときも必要となります。
Q. 株主総会の決議が必要な登記とはどんなものがありますか?
A. 役員の選任・解任、定款の変更が必要となる商号・目的・公告方法の変更、解散や減資など、株式会社のする多くの登記で必要となります。
Q. 株主全員の同意が必要な登記とはどんなものがありますか?
A. 株式会社から持分会社へ組織変更をするとき、発行する全ての株式に取得条項を設定するときなどです。
Q. 株主リストが必要ない登記とはどんなものがありますか?
A. 代表取締役の住所変更登記や自己株式の消却を取締役会の決議で行ったとき、定款に「当会社は、本店を東京都港区に置く。」と定めている会社が港区内で本店を移転するときに当該決定を取締役(会)がしたときなどです。
Q. 社員リストとは?
A. 株主リストが必要な対象会社(法人)として、株式会社以外に投資法人と特定目的会社が挙げられています。これらの会社・法人には株式会社の株主に相当するものとして社員がいますので、一定の(社員の決議が必要な)登記申請には社員リストの添付が必要となります。
Q. 有限会社でも株主リストは必要ですか?
A. 必要です。
Q. 合同会社、一般社団法人、NPO法人でも株主(社員)リストは必要ですか?
A. 不要です。
Q. 株式会社の設立登記申請では株主リストが必要ですか?
A. 不要です。
Q. 株主総会を書面決議で行った場合も株主リストは必要ですか?
A. 必要です。なお、この場合でも、必ずしも株主リストへ株主全員の記載が必要ではなく、議決権割合が3分の2に達するまでの株主の記載でもOKです。
株主総会の書面決議につきましては、こちらの記事をご参照ください。
≫みなし株主総会(決議)-会社法第319条
Q. 種類株主総会の株主リストは必要ですか?
A. 登記すべき事項につき、種類株主総会の決議や同意が必要な登記申請においては必要です。
Q. 会計監査人の自動再任の登記申請にも株主リストは必要ですか?
A. 不要です。
なお、会計監査人の自動再任につきましては、こちらの記事をご参照ください。
≫定時株主総会と会計監査人の重任登記
Q. 株主総会ごとに必要となるのですか?
A. 登記すべき事項にかかる議案ごとに必要となります。ただし、各議案につき議決権を行使することができる株主が同じ場合は、株主リストは1通でも問題ありませんが、「第1号議案及び第3号議案」などのように議案と株主をリンクできるよう特定しておく必要はあります。
議案が複数あるときは「各議案」という表現でも問題ありません。
Q. 株主リストは誰が作成しますか?
A. 登記申請をする代表取締役です。株主総会開催時の代表取締役ではありませんのでご注意ください。
Q. 吸収合併の消滅会社の株主リストは誰が作成しますか?
A. こちらの記事をご参照ください。
≫組織再編、組織変更時の株主リストの作成者
Q. 株主リストの雛形を教えてください。
A. 法務省のこちらのサイトをご参照ください。
≫法務省<株主リスト>
Q. 効力発生日が平成28年10月1日以前の登記申請でも株主リストは必要ですか?
A. 必要です。
Q. 株主リストの記載事項は?
A. 株主リストの記載事項は次のとおりです。
- 株主の氏名又は名称
- 住所
- 株式数(種類株式発行会社は,種類株式の種類及び数)
- 議決権数
- 議決権数割合
Q. 株主の氏名又は名称と住所が英語表記です。訳文は必要ですか?
A. 英語表記のままでOKです。
Q. 株主が法人です。株主たる法人の代表者の記載は必要ですか?
A. 不要です。
Q. 株主リストと株主名簿の記載事項の違いは?
A. 株主リストの記載事項は上記のとおりですが、株主名簿の記載事項は次のとおりです。
- 氏名又は名称
- 住所
- 保有する株式の数
- 取得日
- 株券番号(株券を発行している会社)
Q. 株主リストの代わりに株主名簿を添付してもいいですか?
A. 株主リストの代わりに株主名簿を添付してする登記申請は、認められていないようです。
Q. 株主リストには株主全員の記載が必要ですか?
A. 議決権数上位10名または議決権割合が3分の2に達するまでの株主のうち、いずれか少ない方の株主を記載します。
Q. 議決権数上位10名を記載する予定です。10位が2名いますが…。
A. 10位の方の両名を記載してください。
Q. 当社には自己株式があります。株主リストへの記載は必要ですか?
A. 不要です。決議事項につき、議決権を行使することができない株主の記載は不要とされています。
Q. 株主総会に欠席した株主がいます。当該株主も株主リストへの記載は必要ですか?
A. 必要です(当該株主が、議決権数上位10名または議決権割合が3分の2に達するまでの株主に該当する場合)。
Q. 株主総会で議案に反対した株主がいます。当該株主も株主リストへの記載は必要ですか?
A. 必要です(当該株主が、議決権数上位10名または議決権割合が3分の2に達するまでの株主に該当する場合)。
Q. 株主リストに押す印鑑は何ですか?
A. 代表取締役の会社実印(法務局への届出印)です。
Q. 株主リストに記載されている各株主の印鑑は必要ですか?
A. 不要です。
Q. 株主の氏名や住所も法務局の審査対象ですか?
A. 審査対象ではありません。つまり、株主リストの様式さえ整っていれば株主の氏名・住所は実際のそれと異なっていても株主リストの補正は要求されませんが(法務局からはそれが正しい内容か分かりません)、株主リストは会社代表者が実印を押印し、その内容を証明する形になりますので、正しい内容のものであることは大前提であるといえます。
Q. 株主総会後に株主が変わりました。どの株主を記載すればいいですか?
A. 株主総会時(基準日)の株主を記載してください。
Q. 株主の住所を正確に把握していないのですが・・・。
A. 会社が把握している限度で記載すれば足りるようです(東京都港区新橋など)。ただし、そのように記載するときは、株主リストに「株主Aの住所につき、株主名簿にも最小行政区画までしか記載されていない」などのように、番地まで住所を記載できない理由を記載します。(平成29年1月31日追記)
Q. 株主総会時(基準日)に株主が死亡していることが判明しました。
A. 当該株主が死亡していたことを知らなかった場合や、死亡を知っていたが相続人が誰か分からない場合は当該相続人を記載します。
当該株主の死亡及び相続人を把握はしていたが、株式の遺産共有が解消していない場合は相続人全員を記載します。
当該株主の死亡及び相続人を把握し、株式の遺産共有状態も解消し、株主名簿の名義書換も済んでいる場合は当該承継人を記載します。
その他の場合は、当事務所までご相談ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。