商業登記関係 単元株
単元株とは
株式会社は、一定の株式数(5個、10個、100個など)を一単元として定款に定めることができ、単元株の定めのある株式会社の一単元に満たない株式(当該株主を単元未満株主といいます)については、株主総会(種類株主総会を含む、以下同じ)において議決権を行使することができません。
10株を一単元とした場合、3株や9株など10株に満たない株式しか持たない株主は、株主総会で議決権を持たないことになります。そのため、招集通知も送られてはきません。
- 株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会又は種類株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができる。
- 前項の一定の数は、法務省令で定める数を超えることはできない。
- 種類株式発行会社においては、単元株式数は、株式の種類ごとに定めなければならない。
種類株式ごとに単元株数を変えることができます
普通株式につき100株を一単元とし、A種類株式については10株を一単元とするなど、種類株式ごとに単元株数を変えることができます。
種類株式と単元株を用いれば、例えば残余財産分配に差を設ける種類株式を発行し、Aさんには単元株の設定のない普通株式を、Bさんには単元株を10株とする種類株式を交付することにより、同じ株式数を持っていても議決権に差をつけることは可能ですが、議決権に差をつけることだけが目的であれば(非公開会社で決議要件を満たすのであれば)会社法第109条の属人的株式を利用した方が早いです。
議決権以外の株主としての権利の制限も
定款に定めることにより、次の権利を除き、単元未満株主の議決権以外の権利の制限をすることも可能とされています(会社法第189条2項)。
- 全部取得条項付種類株式の取得対価の交付を受ける権利
- 株式会社による取得条項付株式の取得と引換えに金銭等の交付を受ける権利
- 株式無償割当てを受ける権利
- 単元未満株式を買い取ることを請求する権利
- 残余財産の分配を受ける権利
- 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める権利
株主の権利を守るためのルール
単元株の設定は、単元未満株式を持つ株主の権利を一部制限することになるため、一定のルールにより単元未満株主の権利の保護が図られています。
単元株の上限
単元株式数は何株にでも設定することができるわけではなく、単元株式数には上限が定められています。
単元株式数の上限は1,000株及び発行済株式の数の200分の1です。
全ての株式会社の単元株式数として1,500株という設定はできませんし、発行済株式数が50,000株の株式会社では250株が最大の単元株式数となります。
単元未満株式の買取請求
会社法第192条により、単元未満株主は、株式会社に対し、自分の所有する単元未満株式を株式会社が買い取ることを請求することができます。
単元未満株主の売渡請求
会社法第194条により、株式会社は、単元未満株主が当該株式会社に対して、単元未満株主が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を、当該単元未満株主に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができます。
単元株式数10株と設定している株式会社につき、6株しか保有していない株主が4株を売り渡すことを当該株式会社に請求することができる旨を定款に定めることができるということです。
単元株式数は登記事項
単元株式数は登記事項です。
単元株を設定、変更あるいは廃止をしたときは、その効力が発生したときから2週間以内に管轄法務局に登記申請をしなければなりません。
単元株の設定方法
単元株は定款で定める必要がある事項です。単元株を新しく設定するとき等は、基本的には定款変更にかかる株主総会の決議が必要となります。
株主総会の決議
単元株を新しく設定する、あるいは単元株式数を増加するときは、定款変更にかかる株主総会の特別決議が必要となります。
単元株式数を増加するとは、既に単元株式数を10株としている株式会社が、単元株式数を100株と変更するような場合をいいます。
取締役の決定または取締役会の決議
単元株の設定、変更、あるいは廃止することは定款の変更になるため、定款変更には株主総会の特別決議が必要となりますが、単元株にかかる一定の場合は、株主総会の決議によらずに単元株を変更(廃止)することができます。ここでいう株主総会の決議によらずとは、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会の決議)によって行うことができることをいいます。
一定の場合とは次のとおりです。単元株の変更(廃止)により、株主の不利益とならないようなケースです。
- 単元株の廃止
- 単元株式数の減少
- 株式分割と同時に単元株の設定をする、あるいは単元株式数の増加をするときで、かつ各株主の議決権が定款変更後に下回らないとき
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。