不動産登記関係 相続した不動産の名義変更手続き
不動産の名義変更とは
土地、建物といった不動産にはそれぞれ所有者がおり、この土地の所有者はAさん、この建物の所有者はBさん、というように各不動産の登記簿に所有者が記録されています。誰が所有者であるのか、は法務局に行き、登記簿謄本を請求することによって確認することができます。1通につき手数料600円(平成27年12月現在)かかります。
賃貸ではなく持ち家にお住まいの方であれば、その持ち家の登記簿にはおそらく世帯主の方が所有者として登録されているでしょう。
売買や贈与、相続などによって不動産の所有者が変わったときは、その所有者の名義変更手続きが必要となります。具体的には、申請書や添付書類、収入印紙を持って管轄法務局へ登記申請をすることになります。
相続登記とは
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなられたときに、その不動産の登記名義人を亡くなった方から不動産を承継した相続人へ変更する手続きのことをいいます。
実は相続登記には、いつまでにしなければならないという期限はありません。相続発生から10ヶ月以内に申告・納付をしなければならない相続税とはその点で大きく異なります。
期限が設けられていないためか相続登記が行われておらず、不動産の登記簿の所有者名義が亡くなった父のまま、亡くなった祖父のままとなってしまっているケースも少なくありません。
相続登記はしなくてもいい?
期限や罰則が定められていないのであれば、相続登記はしなくてもいいのでしょうか。当事務所では、次の理由から早めに相続登記手続きをすることをおすすめしております。
大きく分けて次の3つの理由があります。
- 時間が経てば経つほど相続人同士で揉める可能性がある
- 時間が経てば経つほど手続きが煩雑になる可能性がある
- 時間が経てば経つほど費用がかかる可能性がある
以下、具体的に見ていきます。
1.後で揉める
例えば相続人同士で話し合った結果、別荘はXさんが相続することに決まりました。しかし、その話し合いの内容を何か書面で残してたわけでもなく、相続登記もしていなかったところ、他の相続人が勝手に第三者に売却してしまいました。あるいは、話し合い後に仲が悪くなった相続人が、相続登記に一切協力してくれなくなってしまいました。
もし遺産についての話し合いが終わったあとに相続登記をしっかりと行っていたら、そのような争いは発生していなかったかもしれません。
2.手間が増える
相続登記が未了のまま相続人に相続が発生すると、当初の相続人の相続人の協力が必要になったり、必要となる戸籍などの書類が増えます。
また、話し合い後に認知症になった方がいる、行方不明になった方がいるときは、家庭裁判所での手続きが別途必要となってきます。
3.費用が増える
上記2.のとおり必要書類が増える、家庭裁判所の手続きによって費用がかかることや、相続が積み重なり相続人が不明となってしまったり時効取得によって裁判所の手続きが必要となるときは、その分当初は不要であった費用がかかってくることがあります。
相続登記に必要な書類
相続登記の申請を法務局にする際に、申請書と併せて提出しなければならない書類(添付書類といいます)がいくつかあります。添付書類として戸籍、改正原戸籍、除籍、戸籍の附票、場合によっては不在住証明、不在籍証明などがあり、一般の方が普段あまり接することのない書類を集めて、法務局に提出する必要があります。
また、相続登記はケースによって添付書類が異なりますので、この書類があればどの相続のケースにおいてもOKというものではありません。
当事務所に相続登記手続きのご依頼をいただければ、戸籍等の添付書類の多くは当事務所でお客様に代わり収集をさせていただくことができますので、お客様にわざわざ戸籍等を集めていただく必要はありません。また、遺産分割協議書などの登記に必要な書類の作成や登記申請、添付書類や権利証の還付手続きなどの手続きの最後までお任せいただくことができます。
親Aが亡くなり、唯一の相続人が子Bである場合
不動産の登記名義人である親Aが亡くなり、相続人が子Bの1名のみであるときの、AからBへの相続登記手続きには次の書類を集めなくてはなりません。
- 亡くなったAの出生から死亡までの戸籍・除籍謄本・改正原戸籍
- 亡くなったAの戸籍附票または住民票の除票(本籍地の記載のあるもの)
- 相続人Bの戸籍謄本(A死亡後に取得したもの)
- 相続人Bの住民票(本籍地の記載のあるもの)
- 不動産の固定資産評価証明書(最新のもの)
相続登記には色々なケースがあります
上記の必要書類について、全て揃えることができないこともあります。
例えば戸籍が戦争で焼失してしまい、そもそも市役所に存在しないケースや、住民票の除票などが保存期間が経過してしまったため廃棄されてしまったケースなどは少なくありません。
- そのように必要書類を全て揃えることができない場合
- 亡くなった方が遺言をのこしていた場合
- 相続人が複数いる場合
- 子ではなく被相続人の兄弟姉妹が相続する場合
など、各相続のご事情によって添付書類は異なってきます。ご自身の相続登記に必要な添付書類を確認されたい方は当事務所までお問い合わせください。
不動産は単独名義にしておくことをお勧めします
相続人が複数いる場合、とりあえず法定相続分に応じた共有名義にしておこうと考える方もいらっしゃるかもしれません。例えば、母が持分2分の1、長男が持分4分の1、次男が持分4分の1などのように法定相続分での共有持分で登記されている登記簿を見ることも少なくありません。
しかし、当事務所では次のような理由から不動産は単独名義にしておくことをお勧めしております。
1.売るときは、共有名義人全員の協力が必要となる
1つの不動産を複数の所有者で共有していると、いざ不動産を売るとなったときに共有者全員の協力が必要となり、共有者の仲に1名でも遠方あるいは海外に住んでいる人がいると非常に手間がかかってしまう可能性があります。
法律上、自己の持分だけを売ることは可能ですが、共有持分の一部だけを買う人は普通はいません。共有者全員から全員の持分(=不動産全体の所有権)を買うことがほとんどです。
もし共有者のうちの1名が不動産を売りたくないと言い出したら不動産を売れなくなってしまいますし、共有者に行方不明者や認知症の方がいるときは、不在者財産管理人や成年後見人の申立て手続きなどが別途必要になります。
2.共有者にも相続が発生します
共有で所有している親族が、いつでも連絡を取り合うことができる仲の良い状態であればまだいいですが、仲が悪くなってしまった場合は話がまとまらなくなる可能性がでてきます。
さらに、共有者の誰かが亡くなり共有者に相続が発生すると、その共有者の妻、子、もしかしたら共有者の妻の兄弟姉妹、その子など、利害関係人が増えることや、当初の共有者と疎遠な人が利害関係人になることも少なくなりません。
共有者に相続を重ねていくと、当初の共有者では簡単にまとまったかもしれない話もまとまらなくなる可能性があります。
相続登記手続きのご費用
相続登記のご費用は、案件によって作業量などが異なりますので、以下はあくまで目安となります。
評価額2,000万円の土地・建物1個(単有)ずつの相続登記の例です。
※離れた地にある不動産の相続登記は報酬を別途頂戴いたします。
※所有権と持分の相続により、申請が2件以上となるときは報酬を別途頂戴いたします。
※上記は一例であり、内容の難易度によって費用が異なることがありますのでご了承ください。
戸籍、住民票、評価証明書などは当事務所で代理取得することができます
戸籍などの一部の書類は、当事務所へ代理での収集をご依頼いただくことができます。
仕事がお忙しくて戸籍などを集めることができない方、戸籍をどこに請求すればいいのか分からない方、戸籍を集めても読むことが難しい方(士業でも読むことが難しい戸籍はままあります)は、それらの面倒な手続きを当事務所にご依頼いただくことができます。
なお、その場合のご費用は1通につき2,500円となります。
(司法書士報酬、消費税の他、郵送費、戸籍等の実費も含んだ金額です。)
お見積りは無料
相続登記費用のお見積もりを希望される場合、固定資産税の納税通知書あるいは固定資産評価証明書をお持ちください。メールによるお見積りのご依頼も承っております。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。