不動産登記関係 相続登記を申請する時に添付する印鑑証明書
相続登記と印鑑証明書
不動産を相続により取得した人は、当該不動産の登記簿の所有者欄を被相続人から相続人へと変更する登記手続きが必要です。
この相続人への名義へと変更尾する登記を、相続登記といいます。
相続登記の添付書類として相続人の印鑑証明書を提出を求められることがあります。
印鑑証明書が必要なケース、必要な人
相続登記の際に印鑑証明書を添付するケースは、一例として次のような場合です。
- 遺産分割協議により特定の相続人が不動産を取得した場合
- 住所証明書として印鑑証明書を用いる場合
- 特別受益を受けた相続人がいるときに、その証明書を添付する場合
- 戸籍の附票等が廃棄されてしまい取得できない等を理由により法務局から求められた場合
実務としては上記1.の、遺産分割協議によって特定の相続人が不動産を取得したときの、遺産分割協議書に押された印鑑を照合するために添付する印鑑証明書の利用例が多いため、以下遺産分割協議書に押された印鑑(印影)を照合するために添付する印鑑証明書について記載します。
登記申請人の印鑑証明書
相続人がXYZと3名いるときに、遺産分割協議によって不動産をXが相続するときの相続登記においては、YZの印鑑証明書は必須ですが登記申請人であるXの印鑑証明書は添付しなくてもよいとされています。
遺産分割協議書を公正証書で作成した場合
遺産分割協議書を公正証書で作成した場合に、この遺産分割協議書を相続登記の申請書に添付したときは、相続人全員の印鑑証明書を添付する必要がなくなります。
印鑑証明書の有効期限
遺産分割協議書に押された印鑑を照合するために添付する印鑑証明書に有効期限はありません。
3ヶ月以上前に発行された印鑑証明書でもOKです。
なお、被相続人が亡くなる前に取得した印鑑証明書でも使用することができます。
コンビニで取得した印鑑も使用できるか
自治体によっては、コンビニエンスストアで印鑑証明書を発行できるところがあります。
法務局に提出する印鑑証明書は、コンビニエンスストアで発行されたものでも使用することができます。
印鑑証明書は原本還付をすることができるか
遺産分割協議書に押された印鑑を照合するために添付する印鑑証明書は、原本と写しを一緒に提出することにより原本を還付してもらうことができます。
印鑑証明書の写しには「原本と相違ありません。汐留太郎(申請人の表示) 印」のように記載し、「印」の箇所には登記申請書に押印した同じ印鑑を押します。
改印したことにより印影が変わった場合
遺産分割協議書に実印Aという印鑑を押した相続人が、押印時に印鑑証明書を取得しておらず、いざ相続登記を申請するという段になったときは実印Bに実印を変更していたときは、当然のことながら当該相続人が今から用意できる印鑑は実印Bにかかる印鑑証明書です。
つまり遺産分割協議書に押された印鑑(実印A)と、相続登記申請書に添付する印鑑証明書の(実印Bの)印影が異なることになります。
実印Aの押された遺産分割協議書と、実印Bにかかる印鑑証明書を相続登記の申請書に添付したとしても登記は通らないでしょう。
登記官が、相続人が本当に実印を押印したのかどうか判断をすることができないためです。
実印Aを遺産分割協議書に押印したときに、それが実印であることを確認するためにも押印時に印鑑証明書をもらっておくべきということになります。
遺産分割協議書と印鑑証明書の住所が異なる場合
遺産分割協議書に記載された相続人の住所と、当該相続人の印鑑証明書に記載された住所が異なることがあります。
遺産分割協議書を作成後に、相続人が住所を移転したようなケースです。
この場合、住民票等によって当該相続人の住所の沿革をつけることにより登記は問題なく通ります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。