不動産登記関係 遺産分割協議は成立したが、押印に協力しないため相続登記ができない場合
遺産分割協議の成立
遺産分割協議は、相続人全員の意思が合致(協議内容に同意)すれば成立します。
遺産分割協議書への署名・捺印(実印)をしなければ遺産分割協議は成立しないというわけではありません。
しかし、各種相続手続きにおいては遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が求められることがほとんどであること、また遺産分割内容について後で揉めないように、遺産分割協議がまとまったら遺産分割協議書は必ず作成しておいた方がいいでしょう。
遺産分割協議と相続登記
相続人がXYZと3名いるときに、遺産分割協議によって被相続人の不動産Aは相続人Xが相続することが決まったときは、不動産の登記名義人につき被相続人から相続人Xへと所有権移転の登記申請をすることができます。
遺産分割協議による相続登記と印鑑証明書
遺産分割協議により、特定の相続人が不動産を取得したときの相続登記の申請では、戸籍等の他に実印の押された遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書を添付しなければなりません。
口頭による合意でも遺産分割協議は成立しますが、相続登記手続きにおいては、その合意内容を登記官に証明するために遺産分割協議書を用意する必要があります。
遺産分割協議書に押印しない相続人がいるケース
遺産分割協議はまとまったけれども、遺産分割協議書に押印しない、あるいは押印をしても印鑑証明書を交付しない(登記申請人以外の)相続人がいるときは、そのままでは相続登記をすることができません。
共有名義への相続登記が済んでいる場合
法定相続分での相続登記は相続人のうち1名から行うことが可能であり、ケースとしては多くはありませんが遺産分割協議前に法定相続分での相続登記がされていることがあります。
この場合は協力しない相続人を相手にして「年月日遺産分割」を原因として、遺産分割協議により不動産を取得した相続人へ、その持分全部移転の登記手続きをするように裁判所へ訴えを提起して勝訴判決を得ることにより、不動産を取得した相続人への持分全移転の登記を申請します。
共有名義への相続登記が済んでいない場合
不動産が被相続人名義のままとなっているケースにおいては、遺産分割協議書に署名捺印しない相続人がいるときは当該相続人に対して所有権の確認の訴えを提起し、押印はしたけれども印鑑証明書を交付しない相続人がいるときは当該相続人に対して遺産分割協議書の神秘確認の訴えを提起し、それぞれ勝訴判決を得ることによって不動産を取得した相続人名義へと相続登記をすることが可能となります。
そもそも遺産分割協議がまとまらない場合
上記は遺産分割協議がまとまった後の相続登記の話です。
そもそも相続人同士の遺産分割協議が整わない場合は、家庭裁判所へ調停の申立てをする等の別の手続きが必要となります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。