商業登記関係 取締役、監査役の氏名を通称名で登記
取締役、監査役の氏名
株式会社の取締役、代表取締役、監査役の氏名は登記事項とされています。また、代表取締役はその住所も登記事項となっています。
有限会社においては、取締役と監査役の住所、氏名が登記事項とされており、代表取締役はその氏名しか記載されません(取締役欄を見れば、当該代表取締役の住所も分かります)。
通称名で登記できるか
日本に長く生活をしている外国人について、市区町村役場の運用として、印鑑証明書の氏名欄に、本名を併記する形で通称名を記載することが可能とされています。
取締役や監査役としての氏名の記載については、本名での登記も通称名での登記も、どちらでも登記をすることが可能です。
ただし、本名と通称名の両方の記載については、カッコ書きなどを用いたとしても、記載することはできません。
印鑑証明書に記載の無い通称名
印鑑証明書に記載の無い、単に個人的に使用している通称名は登記することができません。
登記官が定款や発起人、株主総会によって選任された取締役・監査役と、登記申請書に記載されている取締役、監査役の同一性を確認できないからです。
また、定款や株主総会の議事録に個人的に使用している通称名を記載し、登記申請書にも当該通称名を記載したとしても、印鑑証明書が添付書類であるときは、役員に就任した人と印鑑証明書に記載されている人が同一人物であることを証明することができず、結局は当該通称名で登記をすることができません。
印鑑証明書の添付が必要なケース
取締役・監査役の就任登記の場面において、次の役員は就任の承諾を証する書面につき、その印鑑証明書の添付が求められます。
- 取締役会非設置会社の取締役
- 取締役会設置会社の代表取締役
- 上記以外の取締役につき、印鑑証明書を本人確認書類として提出する場合
- 監査役につき、印鑑証明書を本人確認書類として提出する場合
印鑑証明書の添付が不要なケースではどのような名前でもOKか
印鑑証明書を提出するときは、少なくとも印鑑証明書に記載のある氏名でしか登記できません。
それでは、取締役・監査役の就任登記につき、印鑑証明書の添付が不要であるケースにおいてはどのような名前でも登記することが可能なのでしょうか。
取締役・監査役の就任登記には本人確認証明書が必要
平成27年4月以前は、取締役会設置会社の代表取締役以外の取締役や、取締役会の有無を問わず株式会社の監査役は、その登記の際に氏名や住所を確認する資料の添付が求められていませんでした。
そのためシステム上は、株主総会議事録や就任承諾書に本名ではない氏名が記載されていても登記は通ってしまいましたが(なお、当該行為は公正証書原本不実記載等罪に該当します。)、現在はそれらの取締役や監査役も就任登記の際に運転免許証等の本人確認証明書の添付が必要となったため、現在ではそのようなことはできません。
つまり、少なくとも本人確認書類として提出する住民票や運転免許証などに記載されている氏名で登記しなければなりません。
本人確認証明書については、次の記事をご参照ください。
芸名やペンネームで登記できるか
芸名やペンネームを取締役や監査役の氏名として登記することはできません。
登記官が定款や発起人、株主総会によって選任された取締役・監査役と、登記申請書に記載されている取締役、監査役の同一性を確認できないからです。
定款や株主総会議事録、登記申請書に同じペンネームを記載したとしても、印鑑証明書や住民票・運転免許証などの本人確認書類で同一性が確認できないことは上記のとおりです。
旧姓で登記できるか
婚姻等によって姓の変更のあった人が取締役等に就任するときは、婚姻前の姓を併記することが可能です。
旧姓の登記については、次の記事をご参照ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。