商業登記関係 代表者全員が日本に住所を有していなくても法人登記は可能に
代表者全員が日本非居住者でもOKになりました
平成27年3月16日以降は、株式会社や合同会社の代表者につき、日本に居住する代表者がいなくても登記が可能となりました(平成27年3月16日付法務省民商第29号通達)。
通達内容は次のとおりです。
平成27年3月16日付法務省民商第29号通達
昭和59年9月26日民四第4974号民事局第四課長回答及び昭和60年3月11日民四第1480号民事局第四課長回答の取扱いを廃止し,本日以降,代表取締役の全員が日本に住所を有しない内国株式会社の設立の登記及びその代表取締役の重任若しくは就任の登記について,申請を受理する取扱いとします。
取扱いを廃止された以前の民事局第四課長回答の内容
取扱いを廃止された以前の民事局第四課長回答の内容は、それぞれ次のとおりです。
昭和59年9月26日民四第4974号民事局第四課長回答
内国会社の代表取締役のうち少なくとも1名は,日本に住所を有しなければ,設立の登記の申請は受理できない。
昭和60年3月11日民四第1480号民事局第四課長回答
代表取締役が日本に住所を有しない内国株式会社の代表取締役の重任又は就任の登記についても当該会社の代表取締役のうち少なくとも一名が日本に住所を有する場合でない限り,その登記の申請は受理すべきではない。
平成27年3月15日以前の取扱い
例えば、中国在住の日本人あるいはアメリカ在住の中国人が、日本で株式会社を設立するときには、代表取締役のうち少なくとも1名は日本に住所を有する者でなければその設立登記申請は受理されないため、日本非居住者のみでの会社を設立することはできませんでした。
これは設立登記に限らず、設立後の会社の代表取締役を変更するときも同様です。なお、以前も現在も国籍についての大きな制限はありません。
代表者の住所に関する縛りは海外の企業の足枷
平成27年3月15日以前の取扱いでは、外国の企業が日本に進出するときはまず日本に住所を有する代表取締役候補者を探さなくてはならず、このことは海外の企業にとっては負担の大きいことだったと思います。
代表者が全員日本非居住者でも良いと取扱いが変更されたことにより、海外の企業が日本において以前より会社設立がしやすくなりました。
外国会社の日本における代表者
外国会社が日本において継続して取引を行うときは、日本における代表者を定める必要があり、当該日本における代表者のうち少なくとも1人は、日本に住所を有するものでなければなりません(会社法第817条1項)。
今回の平成27年3月16日付法務省民商第29号通達では、あくまで内国株式会社等についての話であり、外国会社は含まれておりません。
そのため、今後も外国会社の日本における代表者は、少なくとも1人は日本居住者である必要があります。
会社法第817条1項
外国会社は、日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならない。この場合において、その日本における代表者のうち一人以上は、日本に住所を有する者でなければならない。
【2022年7月追記】
外国会社の日本における代表者は個人だけではなく、法人も登記することができるようになりました。
また、外国会社の日本における代表者として弁護士等を定めた場合には、その住所として、当該弁護士等の事務所の所在場所を登記することもできるようになりました。
銀行口座を作るときに苦労をするかもしれません
代表者の全員が日本に住所を有していない法人は、実務上、銀行で法人口座を作るときに銀行から断られてしまうケースも少なくありません。
役員全員が日本非居住者である日本法人の設立を検討されている方は、(回答してくれるかどうかはさておき)あらかじめ銀行に口座開設をすることの可否につき確認をしておいた方がいいかもしれません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。