不動産登記関係 自分の知らない間に、勝手に相続登記がされることはあるか
不動産の相続と相続登記
不動産を所有している人が亡くなったときは、その不動産は相続人が承継することになります。
相続により不動産の所有者が変わったときは、その登記簿の名義人を被相続人から相続にへ変更する登記手続きをすることになります。
この登記手続きのことを相続登記といいます。
相続登記の申請人
相続登記に限らず、不動産の登記申請をすることができる人は法律で定められています。
原則として、相続登記は不動産を相続により承継した人が行うことができます。
関係のない第三者が勝手に他人の相続登記を申請することはできません。
(ただし、登記の審査は書面審査により行われますので、本人が申請したと偽って第三者が登記申請をすることができてしまう可能性はあります(犯罪です)。)
法定相続分による相続登記
相続登記においては、法定相続分による持分割合で、相続人全員を登記名義人とする相続登記の申請は、相続人のうち1名から行うことができます。
相続のうち1名が他の相続人の分まで相続登記を申請することができるのは、あくまで法定相続分に応じた相続登記のみです。
書類を偽造されない限り、遺産分割協議をしていないのにも関わらず、法定相続分とは異なる持分での相続登記をされることはありません。
権利証の発行の有無
- 持分2分の1 A
- 持分4分の1 B(申請人)
- 持分4分の1 C
相続人が配偶者A、子BCといたときに、Bが単独で法定相続分による相続登記をしたときは、ACに対して権利証(登記識別情報通知)が発行されません。
権利証は申請人にしか発行・交付されないためです。
なお、権利証がACに対して発行されないからといって、ACが共有者として何の権利もないというわけではありません。
後から再発行?
権利証は、名義変更の登記が完了したタイミングでしか法務局は発行しません。
上記の例で、ACが後日権利証を発行して欲しいと法務局に依頼をしても、新しく権利証が発行されることはありません。
これは、Bが権利証を紛失して再発行を依頼したときも同様です。
再度、移転登記するときの費用
法定相続分による相続登記をした後に、遺産分割協議がまとまり誰か1人が当該不動産を承継することが決まったときは、他の相続人の持分全部を移転する登記をすることになります。
上記の例で、例えばAが承継することに決まったときは、BC持分の全部移転登記をします。
法定相続分による相続登記をしていなければ、被相続人から直接Aへ相続登記をすることができますが、法定相続分による相続登記を入れると、
- 法定相続分による相続登記
- 遺産分割による持分全部移転登記
の2つの登記が発生し、両方に登録免許税がかかります。
また、上記の例ではCに権利証が発行されていないため、権利証があるときに比べて持分全部移転の登記にやや手間がかかります。
そのため、法定相続分による相続登記を一度入れるケースは、あまり多くないかもしれません。
債権者による代位登記
債権者が自らの権利を保全するために、債務者の有する登記を申請する権利につき、債権者が債務者に代わりその権利を行使して登記申請することがあります。
これを代位による登記といいます。
債権者代位による登記は、差し押さえ登記や競売をする前提として行われます。
相続登記をして債務者である相続人名義に一度しないと、差し押さえ登記等ができないためです。
(滞納している)債務者である相続人から債権を回収するために、代位による登記が行われることがあります。
なお、特段の事情がない限り、債権者代位による相続登記は法定相続分によります。
権利証の発行の有無
相続登記は、登記申請をした人であり不動産取得者である人にしか権利証が発行されません。
そのため、代位による登記の場合は、相続人全員に権利証は発行されないことになります。
代位による登記を申請をした債権者も、不動産取得者ではないため、権利証が発行されることはありません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。