不動産登記関係 相続人に未成年者がいる場合の相続登記手続き
不動産の相続と相続登記
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継しますので(民法第896条)、被相続人が所有していた不動産は相続人が承継します。
不動産には原則として登記簿が存在し、被相続人の名義となっている登記簿の名義につき、不動産を承継した相続人名義に変更することができます。
この登記(手続き)のことを相続登記(手続き)といいます。
相続登記には不動産を承継した相続人の大切な権利を守る役割がありますので、不動産を相続した人は相続登記をして自分の名義に変更しておくことをお勧めします。
相続登記と未成年者
未成年者も被相続人の財産に関する権利義務を承継しますので、被相続人が不動産を所有していた場合は、当該不動産を相続することになります。
登記手続き上も、不動産の登記名義が未成年者になることは何の問題もありません。
未成年者が相続した不動産の登記名義人になるケースとして、次の3つについて確認していきます。
- 法定相続分による相続登記
- 遺言による相続登記
- 遺産分割協議書に基づく相続登記
法定相続分による相続登記
各相続人は、法定相続分に応じた相続登記を申請することができます。
相続人が妻と子(未成年)の2名だけである場合の法定相続分は各2分の1ずつです。
法定相続分に応じた登記は、相続人のうち1名からでも申請をすることができますが、次の点に注意が必要です。
まず、自分の持分についてだけを相続登記することができませんので、他の相続人の相続分についても同時に申請をしなければなりません。
また、申請人以外の相続人には権利証(登記識別情報)が発行されませんので、親だけが申請人になるのではなく、親が子の法定代理人として子も申請人に加えた上で登記申請をした方がいいでしょう。
遺言による相続登記
遺言によって不動産を子(未成年者)に相続させる旨の遺言があった場合は、この遺言を用いて、被相続人の名義から子の名義へ変更する相続登記を行うことができます。
親が子の法定代理人として、子に代わり相続登記の手続きを進めることになります。
遺言による相続登記手続きについては、こちらの記事をご参照ください。
≫自筆証書遺言がある場合の相続登記手続き
≫公正証書遺言がある場合の相続登記手続き
遺産分割協議書に基づく相続登記
相続人が妻と子(未成年者)であるときに、遺産分割協議をして妻が単独で不動産を相続したいというニーズがあったとします。
未成年者は自分自身で遺産分割協議をすることができませんので代理人が必要となりますが、法定代理人である母も父の相続人という地位にあり、このケースにおいて母が子の代理人として(母と)遺産分割協議をするという行為は利益相反行為に該当します。
利益相反とは、母の行為により母の利益となる行為が、子の不利益となるような関係をいいます。
そのため、母に代わり子の代理人となり、母と遺産分割協議をする特別代理人の選任を家庭裁判所に申立てなければなりません。
家庭裁判所に選任された特別代理人と母が遺産分割協議を行うことになります。
なお、遺産分割協議をいつまでに行わなければならないという期限はなく(相続税の申告・納付の期限には注意)、未成年者が成人した後に遺産分割協議を行うには特別代理人は不要となりますので、状況によっては子が成人になるのを待つこともあるでしょう。
特別代理人を選任したときの相続登記の添付書類
母と子の遺産分割協議がまとまった後は、一例として、次の書類を添付して妻名義にする相続登記を申請します。
- 被相続人の出生から死亡までの一連した戸籍
- 被相続人の戸籍附票
- 相続人の戸籍
- 母の住民票
- 遺産分割協議書
- 母と特別代理人の印鑑証明書
- 家庭裁判所の特別代理人の選任を証する書面
- 固定資産評価証明書
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。