相続関係 【相談事例】縁遠い親戚の代表相続人を指定してほしいという通知が届いた(相続放棄)
後順位相続人と相続放棄
(生前に全く交流の無かった)親戚に相続が発生したため、代表相続人を決めて欲しい。
このような通知が市区町村、あるいは債権者から送られてきたので相続放棄をしたいというご相談をいただくことがあります。
一度も会ったことのない親戚の相続について、相続する、あるいは相続放棄をしなければならないのでしょうか。
通知を無視するとどうなるか
市区町村や債権者から通知が送られてくるということは、
- 戸籍や裁判所で調査した上で通知をしてきている
- 固定資産税や債務の返済を求めてきている
可能性が高いといえます。
私には関係ない、通知は何かの間違いだと通知を無視すると、時間の経過とともに単純承認をしたとみなされてしまいますので、もし被相続人に多くの債務があるときはその返済義務を相続してしまうことになります。
市区町村や債権者からの通知は無視しない方がいいでしょう。
債権者への連絡と単純承認に注意
通知がきたことに驚き、焦って債権者へ連絡をしてしまい、債務を調査せずに「分かりました、返済します。」等と伝えてしまったり、1円でも返済をしてしまうと単純承認をしたものとみなされ相続放棄をすることができなくなってしまいます。
相続放棄の手続き中であれば「現在相続放棄の手続き中です。」等のように回答し、単純承認をしないように注意が必要です。
法定相続人の基本
誰が相続人となるかは民法で定められています。
今回のご相談者様は一度も会ったことのない、名前も知らなかった叔母の財産を代襲相続されていました。
相続人が誰になるのかは法律上自動的に決定されるため、被相続人と相続人が生前に面識があったかどうかは関係ありません。
相続財産を確認する
相続放棄をすると負債・借金等のマイナスの財産を相続することもなくなりますが、預貯金や不動産等のプラスの財産も相続することができなくなります。
プラスの財産が気になるときは、相続財産の調査をした方がいいかもしれません。
ただし、相続財産を調査することは相続放棄申述の手続き上は必須事項ではありませんので、相続に一切関わりたくないといった理由により、相続財産を調査せずに相続放棄をすることは可能です。
相続放棄申述期間を確認する
相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内にしなければなりません(民法第915条)。
被相続人に子等がいるときに、兄弟姉妹や甥姪の相続放棄申述期間の起算点は、先順位相続人が全員相続放棄をしたことにより自分が相続人となったことを知った時です。
≫相続放棄は3ヶ月以内にしなければなりません…これっていつから3ヶ月?(東京汐留相続サポートセンター)
相続放棄申述の添付書類を確認する
被相続人の甥や姪が相続放棄をするときの、相続放棄申述にかか提出書類は次のとおりです。
- 相続放棄申述書
- 収入印紙800円
- 郵便切手
- 被相続人の住民票または戸籍附票
- 申述人の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍
- 被相続人の子や孫がいるときは、その出生から死亡までの戸籍
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍
- 自分の親(被相続人の兄弟姉妹に該当する人のみ)の死亡の記載のある戸籍
※同一の被相続人についての相続放棄等の手続きにつき、既に提出されている資料の添付は不要とされています。
戸籍の代理収集
相続放棄申述の申立てにかかる書類の代理作成をご依頼いただいた方に限り、相続放棄に必要となる戸籍の収集を、ご希望に応じて依頼者に代わり行っております。
相続放棄をしたいのだけれども戸籍の集め方が分からない、という方もお気軽にお問い合わせください。
相続放棄の申述が完了したら
相続放棄の申述が家庭裁判所に受理されると、相続放棄受理通知書が郵送されてきます。
相続放棄の申述が家庭裁判所に受理されると、相続放棄受理証明書を家庭裁判所で取得できるようになります。
市区町村や債権者には、相手が通知書でいいと言われない限りは、相続放棄申述受理証明書を提示(提出)することにより、相続放棄をして相続人ではなくなったことを証明します。
ご相談はお早めに
相続放棄には申述期間が定められています。
今日が相続放棄申述の申立期間の満了日です、とご相談をいただいても対応することが難しいかもしれません。
相続放棄の申述や相続税の申告のように、期間のある手続きのご相談はお早めに専門家へご相談ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。