商業登記関係 登記簿に記載された取締役の順序を変更したい
取締役の氏名と登記簿
株式会社においては取締役・監査役の氏名と、代表取締役の住所・氏名は登記事項とされており、特例有限会社においては取締役・監査役の住所・氏名と、代表取締役の氏名が登記事項とされています。
取締役、代表取締役及び監査役が複数名いるときは、当然全員が登記簿に記載されることになりますが、登記簿謄本をご覧になった方はご存知のとおり、
- 取締役 A
- 取締役 B
- 取締役 C
- 代表取締役 A
- 代表取締役 B
- 監査役 D
- 監査役 E
のように各役員が上から順に記載されることになります。
この順番はどのように決定されるのでしょうか。
登記簿の順は申請書どおり
登記簿に記載されている役員の順番は、役員に関する登記申請をした際の申請書のとおりとなります。
例えば会社設立登記の申請の際に、登記すべき事項として、
- 取締役 A
- 取締役 B
- 取締役 C
と記載して登記申請をすればその順番に登記されます。
これは定款において設立時取締役を選任しており、その順序が、
- 設立時取締役 C
- 設立時取締役 A
- 設立時取締役 B
となっていても申請書の内容のとおり登記簿に記載されることになりますので、役員が複数いるときはその順番というのは大切であると考えておりますので、毎回ご依頼者様に確認をしています。
役員の順序を変更することができるか
登記簿の記載が、
- 取締役 A
- 取締役 B
- 取締役 C
とあるときに、Cを一番上に持ってきたいというニーズがあったとします。
まず、単に役員の順序を入れ替えるだけの登記申請や法務局へのお願いはすることはできません。
それでは他の登記、例えば改選期の役員重任登記のタイミングではどうでしょうか。
結論から申し上げますと、役員重任登記の際も順序を入れ替えることができません。
現在の順番のまま、各役員に「年月日重任」の登記が入るだけです。
役員の順序変更と管轄外本店移転登記
(法務局の)管轄外本店移転の登記申請をすると、旧管轄での登記簿は閉鎖され、新管轄で新しい登記簿が起こされることになります。
このときに、役員の順番を変更することが可能となります。
平成29年7月6日付法務省の通達により、管轄外本店移転の登記申請において、新本店の管轄法務局に(旧管轄を経由して)提出する申請書の登記すべき事項は「年月日本店移転」だけで良くなりました。
≫管轄外への本店移転登記にかかる登記すべき事項が簡素に
新本店宛て登記申請書の登記すべき事項につき「年月日本店移転」として登記申請をすると、旧管轄の登記簿(本店移転前の登記簿)と同じ役員の順番で新本店の登記簿が作成されることになります。
そこで、当該登記すべき事項につき「商号」から「登記記録に関する事項」全て記載して、役員の順番のみ希望する順番を記載することにより、当該申請内容で新本店の登記簿が作成されます。
※法務局によって取扱いが異なる可能性があります。ご自身で登記申請される方は、法務局に確認の上、登記申請をしてください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。