商業登記関係 一般社団法人における理事会の決議省略(みなし決議・書面決議)
理事会の決議があったものとみなす
理事会を設置している一般社団法人は、理事会の決議によって業務執行等の多くの事項を決定することができます。
また定款に別段の定めがあるときを除き、少なくとも3ヶ月に1回は、代表理事及び業務執行をする理事と選定された理事は、理事会へ職務の執行状況を報告しなければならないとされています(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、法人法といいます)第91条2項)。
理事会は、一般的には理事及び監事が一堂に会して(テレビ会議等も可)理事の過半数の賛成によってその決議を行いますが、一定の条件を満たした場合はその決議を省略することができます。
なお、決議が省略できるとは代表理事等の特定の理事が、理事会での決議が必要な事項を独断で決定することができるわけではありません。
理事全員の同意が必要
理事会を設置している一般社団法人は、理事が提案をした理事会の決議事項について、理事の全員が同意をしているときは、定款にその旨の定めがある場合において、理事会の決議があったものとみなすことができるとされています(法人法第96条)。
(理事会の決議の省略)
法人法第96条理事会設置一般社団法人は、理事が理事会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき理事(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監事が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。
議決に加わることのできる理事
理事会決議の目的事項につき、特別な利害関係を有する理事は決議に参加することができません。
一例としては、理事が所有している不動産を一般社団法人に売却するケースや、特定の理事の借入の保証人に一般社団法人がなるケースです。
ある議題につき特別な利害関係を有する理事はその決議に参加することができませんので、決議省略をするときも当該理事の同意は不要ということになります。
同意は書面または電磁的記録で
同意は書面または電磁的記録ですることが求められていますので、口頭での同意では決議省略をできません。
理事毎に同意書を作成して、そこに押印をしてもらうことが一般的かもしれません。
同意はメール(電磁的記録)でもOKですが、理事本人が同意をしたことの証拠を残すために電子署名を求めるような方法もあります。
監事が意義を述べたとき
理事が提案した理事会の目的事項につき、監事が異議を述べたときは理事会の決議省略をすることはできません。
なおこの場合、理事が提案した議案が否決されたわけではありませんので、実際に理事会を開催してその決議を経ることになります。
定款にその定めが必要
理事会の決議省略をするときは、定款にその定めが必要です。
ここは、定款に特別の定めなく決議省略をすることができる社員総会とは大きく異なる点です。
≫一般社団法人における社員総会の決議省略(みなし決議)
理事会の決議省略にかかる定款の記載例は次のとおりです。
※「法人法」の部分は、各定款の定め方によって変更してください。また、法人法の部分を「決議に参加することのできる理事全員の同意~」と詳細に書く法人もあります。
理事会への報告の省略
理事会の決議だけではなく、理事会への報告も省略することができます。
理事会への報告の省略は、理事等が理事会への報告事項を理事と監事の全員に対して通知する方法によって行います(法人法第98条1項)。
(理事会への報告の省略)
法人法第98条1項理事、監事又は会計監査人が理事及び監事の全員に対して理事会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を理事会へ報告することを要しない。
報告を省略できない事項
上記のとおり、一定の場合は理事会への報告は省略することができますが、代表理事及び業務執行をする理事として選定された理事の職務執行状況に関する報告(法人法第91条2項)は省略することができません(法人法第98条2項)。
理事会の決議省略と理事会議事録
理事会の決議省略、理事会への報告省略をしたときも、その理事会議事録は作成しなければなりません。
理事会の決議省略をしたときの理事会議事録には次の事項を記載します。
- 理事会の決議があったものとみなされた事項の内容
- 上記事項を提案した理事の氏名・名称
- 理事会の決議があったものとみなされた日
- 議事録作成者の氏名
報告を省略したときの記載事項
理事会への報告を省略したときの理事会議事録には次の事項を記載します。
- 理事会への報告を要しないものとされた事項の内容
- 理事会への報告を要しないものとされた日
- 議事録作成者の氏名
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。