商業登記関係 一般財団法人における評議員会の決議省略(みなし決議)
一般財団法人と評議員会
一般財団法人の機関として、必ず評議員会(≫一般財団法人の機関設計)があります。
評議員会には定時評議員会と臨時評議員会の2つがあり、定時評議員会は年に1回、毎年の事業年度終了後一定の時期に招集しなければならないとされており(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、法人法といいます)第179条1項)、臨時評議員会は必要に応じて開催することができます(法人法第179条2項)。
評議員会では法人法に定められている事項及び定款に定められた事項について決議をすることができます。
評議員会の決議
評議員会は評議員全員へ招集通知を発送して、(理事会によって)決定された日時に決められた場所に評議員が集まり、議案について決議をする方法によります。
評議員会の開催・決議については、次の記事をご参照ください。
評議員会の決議省略・みなし評議員会決議
理事が提案した評議員会の目的である事項に評議員全員が同意をしたときは、その提案を可決する旨の評議員会があったものとみなすことができます(法人法第194条1項)。
(評議員会の決議の省略)
法人法第194条1項理事が評議員会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき評議員(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の評議員会の決議があったものとみなす。
株主総会の決議省略ではその目的である事項の提案権が株主にも、一般社団法人における社員総会の決議省略ではその目的である事項の提案権が社員にもありますが、評議員会の決議省略ではその目的である事項の提案権は理事のみとされています。
上記のとおり、評議員会の決議の省略といっても、評議員の意向を無視して理事だけで評議員会の決議事項を勝手に決議していいわけではありません。
理事の提案に対する同意
評議員会の決議省略には評議員全員の同意が必要ですが、この同意は書面または電磁的記録による意思表示が必要ですので、口頭での同意はNG、電子メールでの同意はOKということになります。
評議員会の決議省略・評議員会のみなし決議の方法であれば招集通知を評議員へ送ったり、一堂に会して評議員会を実際に開催する必要がないため、評議員全員の同意を容易に得られる一般財団法人では利用されることが少なくありません。
定款に特別な定めは必要か
評議員会の決議省略・評議員会のみなし決議をするときは、一般財団法人の定款に特段の定めは不要です。
もちろん、任意的にその旨を定款に定めることも可能です。
決議を省略できる評議員会の種類
決議を省略できる評議員会の種類は臨時評議員会だけではありません。
定時評議員会の決議も、その決議を省略することができます(法人法第194条1項、同条4項)。
報告事項も省略できる
一般財団法人は事業報告等を定時評議員会、臨時評議員会に報告しますが、これらの報告事項も省略することができます(法人法第195条)。
報告事項の報告を省略するには、理事が評議員会における報告事項を評議員全員に通知して、当該報告事項を評議員会にて報告しないことにつき評議員全員が同意する必要があります。
(評議員会への報告の省略)
法人法第195条理事が評議員の全員に対して評議員会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を評議員会に報告することを要しないことにつき評議員の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の評議員会への報告があったものとみなす。
評議員会の決議省略と評議員会議事録
評議員会の決議を省略したときも、その評議員会議事録を作成しなければならないとされています。
当該評議員会議事録には次の事項を記載します。
- 評議員会の決議があったものとみなされた事項の内容
- 上記事項の提案をした理事の氏名
- 評議員会の決議があったものとみなされた日
- 議事録作成者の氏名
報告事項の省略と評議員会議事録
評議員会への報告を省略したときも、決議を省略したとき同様にその評議員会議事録を作成します。
当該評議員会議事録には次の事項を記載します。
- 評議員会への報告があったものとみなされた事項の内容
- 評議員会への報告があったものとみなされた日
- 議事録作成者の氏名
1回の評議員会で報告事項と決議事項を省略したときは、1つの評議員会議事録にその両方を記載します。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。