商業登記関係 有限責任事業組合(LLP)の解散事由とその手続き
有限責任事業組合の解散事由
有限責任事業組合(以下「LLP」といいます。)は次の事由が発生したときに解散します(有限責任事業組合契約に関する法律(以下「LLP法」といいます)第37条)。
- 目的たる事業の成功又はその成功の不能
- 組合員が1人になったこと
- LLP法第3条第2項※の規定に違反したこと
- 存続期間の満了
- 総組合員の同意
- 組合契約書において前各号に掲げる事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由の発生
※
LLP法第3条2項
組合契約の当事者のうち1人以上は、国内に住所を有し、若しくは現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人(第37条において「居住者」という。)又は国内に本店若しくは主たる事務所を有する法人(同条において「内国法人」という。)でなければならない。
LLPは組合員のうち1人以上は国内に住所を有していること等が必要であるところ、この規定を満たしていないときは解散してしまいます。
しかし、上記の解散事由のうち「2.組合員が1人なったこと」及び「3.LLP法第3条第2項の規定に違反したこと」については、その事由が生じた日から2週間以内かつ解散の登記をする日までに解散事由に抵触している状態を脱したときは解散しなくても良いとされています(LLP法第37条但書)。
LLP法第37条
組合は、次に掲げる事由によって解散する。ただし、第2号又は第3号に掲げる事由による場合にあっては、その事由が生じた日から2週間以内であって解散の登記をする日までに、新たに組合員(同号に掲げる事由による場合にあっては、居住者又は内国法人である組合員)を加入させたときは、この限りでない。
以下省略
組合員の居住者要件
株式会社や合同会社、一般社団法人等は代表者(代表取締役、代表社員、代表理事)全員が日本に居住していなくても登記が可能となりました。
LLPにおいては、LLP法第3条により組合員のうち1人以上は国内に住所を有している人等である必要があります。
解散しても清算結了まで組合は存続
LLPが解散してもすぐに組合が無くなるわけではありません。
解散したLLPも清算の目的の範囲内において、清算が結了するまでは存続するものとみなされます(LLP法第38条)。
解散したLLPは清算結了まで、清算人が清算手続きを進めることになります。
解散の登記を申請する。
LLPが解散事由に該当したときは、その事由が生じた日から2週間以内に解散の登記を法務局へ申請します。
ただし、上記のとおり解散事由のうち「組合員が1人なったこと」及び「LLP法第3条第2項の規定に違反したこと」については、一定の条件を満たしたときは解散しません。
一般的には、解散登記と併せて清算人の選任登記も申請します。
清算人は誰がなるか
清算人は、組合員がなります(LLP法第39条1項)。
ただし、総組合員の過半数の決定をもって清算人を選任することができ、その場合は組合員が自動的に清算人とはなりません。
解散及び清算人選任の登記の添付書類
組合員がそのまま清算人になったときの、解散及び清算人選任の登記の添付書類は次のとおりです。
- 解散の事由の発生を証する書面
- 委任状(代理人に申請を依頼する場合)
なお、存続期間は登記事項ですので、該当する解散の事由が「(登記された)存続期間の満了」であるときは、解散の事由の発生を証する書面の添付は不要です。
また、組合員の脱退による変更登記と同時に解散の登記を申請するときで、脱退後の組合員が1名であることが登記簿及び登記申請の内容から判明する場合も、解散の事由の発生を証する書面の添付は不要です。
解散及び清算人選任の登記の登録免許税
LLPが解散及び清算人選任の登記をするときの登録免許税は、36,000円です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。