商業登記関係 株式会社の設立と現物出資をする方法
会社設立と出資
株式会社を設立するには、各発起人は設立時発行株式を1株以上引き受けなければならず(会社法第25条2項)、株式を引き受けるには対価となる出資をする必要があります。
この出資につき、金銭で出資をすることがケースとしては多いかと思いますが、モノや債権等を出資することも可能とされています。
金銭以外のモノや債権等を出資することは、「現物出資」と呼ばれています。
金銭出資と現物出資を混合させることも可能で、金銭出資100万円、現物出資100万円の合計200万円の出資とすることもできます。
※合同会社も同様に社員が現物出資をすることができます。
現物出資できる財産
現物出資をすることができる財産は、貸借対照表に資産として計上できる財産であることが必要とされています。
債権や不動産、動産(車やパソコン等)はもちろんのこと、特許権や仮想通貨も現物出資の対象とすることもできます。
先日、仮想通貨「イーサリアム」を現物出資して会社設立をしたことがニュースとしてありましたが、ケースとしてはまだ多くはないのではないでしょうか。
なお、仮想通貨を現物出資すると、時価で譲渡したものとみなされて所得税が課される可能性がありますのでご注意ください。
定款にその記載が必要
現物出資に関する事項は、必ず定款にその記載をしなければならないとされており、記載が無い場合は現物出資の効力が生じません(会社法第28条)。
現物出資に関する事項として定款に記載する事項は次のとおりです。
- 現物出資をする者の氏名又は名称
- 現物出資の対象財産
- 現物出資の対象財産の価額
- 現物出資をする者に対して割り当てる設立時発行株式の数
定款の記載例
土地を現物出資したときの定款の記載例は次のとおりです。
第○○条 当会社の設立に際して現物出資をする者の氏名、出資の目的である
財産、その価額及びこれに対して割り当てる株式の数は、次のとおりであ
る。
(1)出資者
発起人 汐留太郎
(2)出資財産及びその価額
所在 東京都○○区○○町○丁目
地番 ○番○
地目 ○○
地積 ○○㎡
1000万円
(3)割り当てる株式の数
1000株
財産の価額と発起人の責任
現物出資された財産の価額は、発起人がこの価額は○○○万円であると合意した価額です。
例えば、1万円のものを100万円として定款に記載することも手続き上はできてしまいますが、発起人は現物出資の財産の価額が定款に記載された価額に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役当該不足額を支払う義務を負うとされています(会社法第52条1項)。
そのため上記の場合、結局は99万円を発起人等が補填することになりますので、財産の価額は1万円と記載しておいた方がいいでしょう。
現物出資と登記手続き
現物出資による会社設立の登記手続きにおいては、金銭出資による会社設立の登記手続きでは提出しない書類を求められます。
具体的には、次のような書類です。
なお、定款に記載されている現物出資された財産の価額(一つひとつの財産が500万円以下ではなく、現物出資された財産の合計額)が500万円以下である場合、下記「3」または「4」に該当する場合は、検査役の調査は不要です。
現物出資による会社設立に特有の添付書類
- 検査役の調査報告書
- 設立時役員の調査報告書(現物出資された財産の価額が500万円以下の場合)
- 有価証券の市場価格を証する書面(定款に記載された価額が市場価格以下の場合)
- 弁護士等の証明書及び附属書類(定款に記載された価額が相当である旨のもの)
- 財産引継書
- 資本金の額の計上に関する証明書
ケースによって用意する書類が異なりますので、詳細についてはご相談ください。
現物出資する財産の価額を500万円以下として、上記「2」で済ませるケースが多いのではないでしょうか(「5」「6」も必要です)。
不動産を現物出資するときは不動産登記も併せて行う
不動産を現物出資したときは、その所有者が個人から法人へと変わりますので、その不動産の名義変更手続きも必要となります(なお、この登記は会社設立の登記手続きに影響は及ぼしません)。
当事務所では現物出資による会社設立の登記と併せて、不動産の名義変更登記についてもご相談いただけます。
現物出資による会社設立のご相談
さて、現物出資をしたときは会社の登録免許税、(不動産を現物出資する場合は)不動産の登録免許税だけではなく、所得税等の他の税金についてもケアしなくてはなりません。
また、資本金の額が1,000万円を超えると、それだけで消費税の免税事業者に該当しなくなってしまいます。
現物出資による会社設立をご検討されている方は、こちらの≫お問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。