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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

【相談事例】登記のご依頼をいただいたときに、他の登記事項の登記懈怠が判明する

登記のご依頼とご準備いただくもの

例えば株式会社の本店を埼玉県から東京都へ移転したので、その登記手続きをお願いしますとご依頼をいただいた場合、まず最初に次の3点をご用意いただいております。

  1. 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  2. 定款
  3. 株主名簿

当事務所ではこれらをいただいた後に、登記簿や定款の会社本店の箇所だけではなく、最初にその内容全体を確認させていただいております。

その際、登記することが必要なのに登記し忘れている(登記懈怠)事項がある、ということが判明することがあります。

その一例として、次のような登記懈怠がよく見かけられます。

役員の任期が過ぎてしまっている

株式会社の登記簿と定款を照らし合わせたときに、一番よく見かける登記懈怠(この場合は選任懈怠が多数)は、役員の任期が過ぎてしまっているケースです。

後任者が見つからず仕方なく権利義務役員となっているのではなく、単に役員の任期が切れていることに気付いていないことが99%です。

同じ人が継続して役員となる場合も、重任(再任)の手続きとその登記はしなければなりません。

心配な会社は、この記事を読んだことをきっかけに一度御社の登記簿と定款を確認してみてください。

役員の任期の計算方法については、こちらの記事をご参照ください。
≫取締役、監査役の任期の計算方法

役員の任期が過ぎてしまっているときの手続きは、こちらの記事をご参照ください。
≫役員(取締役・監査役)の任期が過ぎてしまっているとき

譲渡制限規定のただし書き

株式に譲渡制限を設けている株式会社は、その定款と登記簿に譲渡制限規定が記載されています。

例えば次のような譲渡制限規定が定款に定められているとします。

第○条 当会社の発行する株式の譲渡による取得については、株主総会の承認を要する。ただし、当会社の株主に譲渡する場合は承認があったものとみなす。

この会社の登記簿を見てみると、譲渡制限規定の欄に次のように記載されていることが稀にあります。

当会社の発行する株式の譲渡による取得については、株主総会の承認を要する。

定款の「ただし書き」以降の部分も登記事項として、登記しなければなりませんが、それが漏れてしまっています。

責任免除規定の登記

一定の条件を満たした場合、役員の責任につき一定の額まで、株主総会の特別決議によって免除することができます(会社法第425条1項)。

これは会社法で定められている事項ですので、定款に任意的に定めても登記する必要はありません。

一方で、取締役が2名以上いる監査役設置会社においては、定款に定めることにより取締役の過半数の同意(取締役会の決議)によって上記責任免除を叶えることができます(会社法第426条1項)。

こちらは登記事項ですので、定款にその旨を定めたときは登記をしなければなりませんが、これをし忘れている会社が稀にあります。

加えて、取締役会設置会社から1人取締役の会社へ移行しているのに当該規定が残ったままの会社もあります。

≫取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の登記

登記懈怠と過料

会社の登記は、原則として効力発生日から2週間以内に申請をしなければならず(会社法第915条1項)、この規定に触れてしまった場合は100万円以下の過料の対象となってしまいます(会社法第976条)。

この過料は、代表者個人に課されるもので、裁判所から郵送物が送られてくるため驚かれる方も少なくありません。

登記事項に変更が生じたときは、忘れずに適宜登記申請をするようにしましょう。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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