商業登記関係 司法書士が一般社団法人の定款の条文を解説します(事務所編)
一般社団法人の定款の条文の内容を解説します。
一般社団法人は協会ビジネスをされる方や社会貢献活動をされる方に人気のある法人形態です。
現在は色々なサイトで株式会社の設立に関する情報が溢れているため、ご自身で一般社団法人設立の手続きをされるケースも少なくありません。
しかし、インターネット上にある定款の内容をよく理解せずに、そのまま利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご自身で一般社団法人を設立する方のために、≫日本公証人連合会のホームページに掲載されている定款等記載例をベースとして、一般社団法人の定款の各条文について解説をしていきたいと思います。
ビジネスに専念したい方
一般社団法人設立の手続きは初めて行う方には時間がかかる上に、一生のうちにその知識を何度も使うわけではありません。
一般社団法人設立の手続きは専門家に任せて自分のビジネスに集中したい方は、こちらのページをご参照ください。
名称に関する条文
第2条 当法人は、主たる事務所を東京都○○区に置く。
2 当法人は、理事会の決議によって、従たる事務所を設置することができる。
一般社団法人の主たる事務所の所在地は、定款に必ず記載しなければなりません(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第11条)。
株式会社や合同会社では会社の住所を「本店」と表現するところ、一般社団法人ではそれを「主たる事務所」と表現します。
上記は主たる事務所の所在地を「東京都○○区」で止めていますが、具体的な主たる事務所の所在場所まで定款に記載することもできます。
第2条 当法人は、主たる事務所を東京都○○区○○一丁目1番1号○○ビル1階に置く。
ただしこの場合、設立後に主たる事務所を同じ区内で移転する際に手続きが増えることがあり、「東京都○○区」で止めている法人がほとんどです。
主たる事務所の所在地はどこまで記載する必要があるか
主たる事務所の所在地は最低限、最小行政区画まで記載しなければなりません。
最小行政区画とは市区町村の単位のことをいいますが、東京23区の場合は区まで記載する必要がありますので、東京都にその主たる事務所を置く場合の定款は
- 東京都港区に置く。
- 東京都中央区に置く。
- 東京都立川市に置く。
のような記載になります。
横浜市、さいたま市、千葉市
横浜市、さいたま市、千葉市のような政令指定都市は、次のような記載でも問題ありません。
第2条 当法人は、主たる事務所を横浜市に置く。
第2条 当法人は、主たる事務所をさいたま市に置く。
第2条 当法人は、主たる事務所を千葉市に置く。
東京都の区と異なり、「さいたま市浦和区に置く。」のように区まで記載する必要はありません(記載することもできます)。
もちろん、
第2条 当法人は、主たる事務所を神奈川県横浜市に置く。
というように県名まで記載してもOKです。
郡の場合
郡制の場合は、郡までで止めずに、町や村まで記載します。
第2条 当法人は、主たる事務所を埼玉県比企郡小川町に置く。
自宅を主たる事務所として登記する。
自宅を法人の主たる事務所として登記をすることも可能です。
自宅がマンションやアパートであるときは、その賃貸借契約によって法人の登記が不可とされているケースもあります。
行う事業によってはその許認可を得る際に事業所の要件が定められていて、自宅ではその許認可が得られないということもあります。
自宅が主たる事務所で問題無いかどうか、事前に確認をしておいた方がいいでしょう。
設立後に主たる事務所を移転することもできますが、登録免許税等の費用がかかります。
具体的な主たる事務所の所在場所の決定
一般社団法人の主たる事務所は登記事項ですので、どこが主たる事務所になるのかを示した書類を法務局に提出しなければなりません。
具体的な主たる事務所の所在場所は、原則として発起人の過半数の一致によって決定します。
なお、定款の本文に具体的な主たる事務所の所在場所が記載されていればこれらを検討する必要はありません。
定款の附則に記載する。
定款の附則に主たる事務所の所在場所を記載することもできます。
第○○条 当法人の設立時の主たる事務所は次のとおりとする。
東京都○○区○○一丁目1番1号○○ビル1階
定款の附則に具体的な主たる事務所の所在場所が記載されていれば、別途主たる事務所の決定したことを証する書面は不要です。
従たる事務所の設置に関する決議
法律上、従たる事務所の設置は理事会の決議によって行います(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第90条4項)。
上記定款第2条2項は、このことを明示している規定となり、必ず定款に記載しなければならない事項ではありません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。