商業登記関係 募集株式の発行手続きにおいて出資金を払い込むタイミングはいつか
募集株式と出資の履行
募集株式の発行手続きにおいて、募集株式の引受人は、払込期日または払込期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければなりません(会社法第208条1項)。
金銭出資ではなく現物出資をする引受人は、給付期日又は給付期間内に、それぞれの募集株式の払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付しなければならないとされています(会社法第208条1項)。
この払込(給付)期日または払込(給付)期間は、非公開会社においては、株主総会の特別決議によって決定します。
この払込期日または払込期間よりも前、あるいは後に株式の対価を払い込むことはできるのでしょうか。
払込期日より前に払い込んだ場合
募集株式の払込金は、払込期日や払込期間の開始より前に払い込むことも可能です。
ただし、募集事項を決定する株主総会(取締役会)の開催日よりも前の日に払い込むことはNGとされています。
募集事項が決定される前に払い込まれた金銭は、引き受けた株式の対価なのか貸付金なのか他の用途なのか、判別ができないためです。
出資することを代表と約束したから約束の翌日に払い込んでおいた、というケースもありますが、募集事項を決定する株主総会(取締役会)が開催されていないと、募集事項の払込金として認められません。
総数引受契約を締結するのであれば契約日以降、申込み+割当て方式の場合は割当日以降に払い込んだ方がいいでしょう。
払込期日より後に払い込んだ場合
募集株式の払込金額を、払込期日または払込期間の末日の翌日以降に払い込むことはできません。
もし、払込期日または払込期間の末日の翌日以降に払い込んでしまった場合は、募集事項の決定を改めて行うことになりそうです。
払込期日の経過前に払込期日を延期をする場合には、募集事項の決定機関がこれを決定することはできますが、株式の申込みをした者がいるときはその株式申込人全員の同意が必要という先例があります。
この払込みは、払込期日または払込期間の末日に払い込んだだけでは足りず、発行会社に金融機関の口座に着金することが必要です(登記のため)。
そのため、15時以降に振り込む等して着金が翌日になってしまった場合は、期日に間に合わなかったと判断されることになります。
出資の履行と株主となる時期
払込期日、払込期間の開始日より前に出資金を払い込むことができることは前述のとおりです。
しかし、期日等よりも前に出資をした場合、出資をした日と当該出資者が株式を取得する日が異なります。
払込期日を定めた場合は、それよりも前に払込みが行われたとしても払込期日に出資者は株式を取得することになります。
出資者全員の払込みが払込期日よりも前に済んでいるのであれば、募集事項の決議機関によって繰り上げることも可能です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。