商業登記関係 司法書士が一般社団法人の定款の条文を解説します(社員の資格喪失編)
一般社団法人の定款の条文の内容を解説します。
一般社団法人は協会ビジネスをされる方や社会貢献活動をされる方に人気のある法人形態です。
現在は色々なサイトで株式会社の設立に関する情報が溢れているため、ご自身で一般社団法人設立の手続きをされるケースも少なくありません。
しかし、インターネット上にある定款の内容をよく理解せずに、そのまま利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご自身で一般社団法人を設立する方のために、≫日本公証人連合会のホームページに掲載されている定款等記載例をベースとして、一般社団法人の定款の各条文について解説をしていきたいと思います。
以下、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を「法人法」といいます。
ビジネスに専念したい方
一般社団法人設立の手続きは初めて行う方には時間がかかる上に、一生のうちにその知識を何度も使うわけではありません。
一般社団法人設立の手続きは専門家に任せて自分のビジネスに集中したい方は、こちらのページをご参照ください。
社員の資格喪失に関する条文
第9条 社員は、次の各号のいずれかに該当する場合には、その資格を喪失する。
(1) 退社したとき。
(2) 成年被後見人又は被保佐人になったとき。
(3) 死亡し、若しくは失踪宣告を受け、又は解散したとき。
(4) ○年以上会費を滞納したとき。
(5) 除名されたとき。
(6) 総社員の同意があったとき。
この規定は、社員の社員の資格喪失について規定しています。
ここでいう社員とは、いわゆる従業員のことではなく、社員総会で議決権を有する者のことをいいます。
この定款第9条(社員の資格喪失)は任意的に定めている規定であり、法律上必ず定款に定めなければならない事項ではありません。
社員と法定退社事由
一般社団法人の社員には法定退社事由が定められており、法定退社事由に該当した社員は退社することになります(法人法第29条)。
法定退社事由は次のとおりです。
- 定款で定めた事由の発生
- 総社員の同意
- 死亡又は解散
- 除名
除名については、こちらの記事をご参照ください。
定款で定めた事由の発生
法定退社事由のうち、「定款で定めた事由の発生」に関する定款の定めを上記第9条は定めていることになります。
法人法上は「総社員の同意」「死亡又は解散」「除名」とあるところ、定款では次の事項を退社事由として追加しています。
- 成年被後見人又は被保佐人になったとき
- 失踪宣告を受けたとき
- ○年以上会費を滞納したとき
社員に会費の納入を義務付けている場合、退社事由としての滞納期間は1年程度にしているところが多いのではないでしょうか。
社員と資格喪失
資格喪失をした社員は、社員たる地位を失うことになります。
一方で、社員は社員総会における議決権(原則として1人1票)を有していますので、一般社団法人に対して大きな権限を有しています。
問題のある社員を除名するときは「正当な事由」(法人法第30条1項)が必要な上、一定の手続きが必要となりますので、一定期間の会費未納等の客観的な退社事由を定めておくことは、一般社団法人を運営していく上で有益であると考えます。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。