商業登記関係 司法書士が一般社団法人の定款の条文を解説します(社員名簿編)
一般社団法人の定款の条文の内容を解説します。
一般社団法人は協会ビジネスをされる方や社会貢献活動をされる方に人気のある法人形態です。
現在は色々なサイトで株式会社の設立に関する情報が溢れているため、ご自身で一般社団法人設立の手続きをされるケースも少なくありません。
しかし、インターネット上にある定款の内容をよく理解せずに、そのまま利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご自身で一般社団法人を設立する方のために、≫日本公証人連合会のホームページに掲載されている定款等記載例をベースとして、一般社団法人の定款の各条文について解説をしていきたいと思います。
以下、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を「法人法」といいます。
ビジネスに専念したい方
一般社団法人設立の手続きは初めて行う方には時間がかかる上に、一生のうちにその知識を何度も使うわけではありません。
一般社団法人設立の手続きは専門家に任せて自分のビジネスに集中したい方は、こちらのページをご参照ください。
社員名簿に関する条文
第10条 当法人は、社員の氏名又は名称及び住所を記載した社員名簿を作成する。
この規定は、社員名簿の作成について規定しています。
ここでいう社員とは、いわゆる従業員のことではなく、社員総会において議決権を有する者のことをいいます。
この定款第10条(社員名簿)は任意的に定めている規定であり、法律上必ず定款に定めなければならない事項ではありません。
社員名簿の作成義務
一般社団法人は社員の氏名又は名称及び住所を記載し、又は記録した名簿(社員名簿)を作成しなければなりません(法人法第31条)。
社員の「氏名又は名称」とあるのは、社員が個人だけではなく法人がなることもできるためです。
上記定款の規定は、法人法の定めをそのまま定款に定めていることになります。
なお、一般社団法人は、作成した社員名簿をその主たる事務所に備え置かなければならないとされています(法人法第32条1項)。
社員名簿の記載事項
一般社団法人の社員名簿の記載事項は、株主名簿の記載事項と比べるとシンプルなものとなっています。
株式会社の株式のように株券を発行することや、社員1人につき議決権が1個であることが原則となっているためでしょうか。
社員名簿の記載事項は次の2つです。
- 社員の氏名又は名称
- 社員の住所
任意的に入社日(社員となった日)を社員名簿に記載している一般社団法人もあります。
社員名簿を作成するメリット
社員名簿の作成は一般社団法人の義務ではありますが、作成しておくメリットもあります。
まず、一般社団法人が自社の社員を正確に把握しておくことができます。たまに社員が誰か分からないという一般社団法人を見ることがあります。
次に、社員に対する通知(社員総会の招集通知等)は原則として社員名簿に記載されている住所にすれば済みます。
連絡が取れなくなった社員であっても社員名簿に記載されている住所宛てに社員総会の招集通知等を送れば法人法違反になりませんし、当該通知等が5年以上継続して到達しなければ通知等を送る必要もなくなります(そのような社員は除名や社員の資格喪失要件に該当する可能性があります)。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。