相続関係 遺言関係 遺言を書いた方がいいケース④-お世話になったあの人に-
誰が自分の財産を相続するのか
人が亡くなると相続が発生します。相続とは、人が死んだときに、その人が持っていた財産の権利義務を、相続人が受け継ぐことをいいます。以下、亡くなった方を被相続人といいます。
上記相続の説明における「相続人」及びこの相続人がどれだけの割合を相続することになるのかは、民法に定められていますが(法定相続人についてはこちらをご覧ください)、「誰が」の部分については遺言によって変更することが可能であり、「どれだけ」の部分については相続人同士の遺産分割協議によって変更が可能です(相続人以外の特定遺贈の受遺者除く)。
生前にお世話になった人
自分を最後まで看護をしてくれた人、それは必ずしも親族とは限りません。それはご近所さんや、籍は入れていないけれども長年連れ添っている人(内縁の妻や事実上の養子など)、あるいは先に亡くなってしまった長男の妻かもしれません。
自分を世話してくれた人に感謝の気持ちを持つ人は少なくないと思います。世話してくれたお礼に自分の財産を少しでも渡したいと考えたときに、ここでは相続という観点から注意点を見ていきます。
感謝の気持ちは伝えるが他に行動はしない
先ほど申し上げたとおり、誰が相続人かは法律で定められています。つまり、基本的には法律で定められた相続人ではない人は相続ができないことになります。
簡単で極端な例を申し上げますと、預金を5,000万円持っていたAさんが亡くなったときに、Aさんは生涯独身で子や孫はおらず、Aさんの両親も既に他界していて、唯一遠方に住んでいて一度も会ったことのない甥Bさんがいた場合、30年以上内縁関係にあった内縁の妻Cさんよりも、相続の場面においてはBさんが優先されることになります。
もしBさんもおらず、法定相続人が誰もいないときは、特別縁故者としてCさんが5,000万円の一部または全部を取得することができる可能性はあります。
遺言という方法
上記は極端な例ですが、Aさんには妻がいて子もいる、ただ、生前お世話になった人に近所のDさんに感謝の気持ちとして数百万だけ遺したいというケースもあるかと思います。
BCさんのケースも、Dさんのケースもそうですが、それぞれCさんDさんに相続財産を渡す方法の一つとして遺言というツールがあります(もちろん、自分が生きているうちに渡してもいい)。遺言を遺すことにより、感謝の気持ちを形にすることができます。
ただし、生前贈与もそうですが、遺留分や相続税・贈与税などの税金、親族の心情的な面についても考慮をしないと、逆に財産を受け取った人に迷惑をかけてしまうこともあるかもしれません。また、遺言は形式や要件が法律で定められているため、それを知らないとせっかく書いた遺言が無効とされてしまう危険もはらんでいます。
相続において、ご自身の「想い」を確実に実現するためにも、税理士・司法書士などの各士業が集まる当グループへぜひお気軽にご相談ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。