商業登記関係 取締役、監査役の任期の起算日はいつ?1日の違いで任期が1年変わることも
役員の任期
株式会社の取締役及び監査役(以下、併せて「役員」といいます。)には必ず任期があり、任期の到来によって原則として退任をすることになります。
≫株式会社の権利義務取締役、権利義務監査役とは何でしょうか。
役員の任期を計算するには、いつからその任期がスタートするのかを把握することが重要です。
時として、役員の選任日が1日違うだけで、当該役員の任期が約1年変わってしまうこともあります。
この記事では役員の任期の起算日に焦点を当てているため、役員の任期の計算方法を確認したい方は次の記事をご参照ください。
任期の起算日を特定する重要性
取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、です(会社法第332条1項)。
期間の計算の1つのポイントとしては「選任後2年以内に終了する事業年度」の箇所です。
例えば事業年度末が9月の株式会社X(取締役の任期伸長規定なし)で、2018年12月の定時株主総会で選任された取締役であれば2年後の2020年12月の定時株主総会の終結時に任期が満了しますので話は比較的単純です。
株式会社Xの取締役が2018年9月30日に選任された場合は、当該取締役の任期はいつまででしょうか。
また、取締役が2018年10月1日に選任された場合、あるいは2018年9月29日に選任された場合はどうでしょうか。
初日不算入の原則
役員の任期の起算日を確認するときは、原則として初日を期間に算入しません(民法第140条)。
これを初日不算入の原則といいます。
民法第140条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
これを上記のケースに当てはめていくと次のようになります。
選任日が1日違うだけで任期が1年変わる
2018年9月30日に選任された株式会社Xの取締役の任期の起算日は同年10月1日となり、応答日の前日は2020年9月30日ですので、当該取締役の任期は2020年12月頃に開催される定時株主総会の終結時までとなります。
2018年10月1日に選任された株式会社Xの取締役の任期の起算日は同年10月2日となり、応答日の前日は2020年10月1日ですので、当該取締役の任期は2020年12月頃に開催される定時株主総会の終結時までとなります。
2018年9月29日に選任された株式会社Xの取締役の任期の起算日は同年9月30日となり、応答日の前日は2020年9月29日ですので、当該取締役の任期は2019年12月頃に開催される定時株主総会の終結時までとなります。
こうしてみると、9月29日に選任された取締役と9月30日に選任された取締役では、たった1日の選任日の違いで1年も任期が変わってしまうことになります。
○○月○○日付けで選任する場合
それでは株式会社Xが2018年9月29日付けの株主総会で、2018年10月1日付けで取締役を選任した場合はどうでしょうか。
この場合も、当該取締役の任期は2019年12月頃に開催される定時株主総会の終結時までとなります。
任期の起算日は、取締役選任の効力が発生したタイミングではなく、取締役選任の決議をした日とされているためです。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。