商業登記関係 株式会社ABC(前株)をABC株式会社(後株)に変更するときも登記は必要?
株式会社の商号と前株・後株
株式会社はその商号の中に必ず「株式会社」という文字を使用しなければなりません(会社法第6条2項)。
(商号)
会社法第6条2項会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。
「株式会社」という文字を使用することが義務付けられていますが、その位置については指定はありません。
そのため、商号としてABCという文字を使用したいと考えたときは、株式会社ABCでもABC株式会社でも良いことになります。
株式会社ABCはABCの前の株式会社の文字があるため前株(まえかぶ)、ABC株式会社は後株(あとかぶ)といいます。
株式会社●●と●●株式会社は別会社
株式会社ABCもABC株式会社も、同じ会社のように見えますが別会社として認識をされます。
商業登記法においては、同じ本店の所在場所に同じ商号の会社の登記があることが禁止されています(同一商号・同一本店の禁止)。
(同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止)
商業登記法第27条商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。
しかし、東京都中央区銀座一丁目1番1号に株式会社ABCという会社が登記されていたとしても、同じ場所にABC株式会社を設立する登記をすることは登記手続き上可能です。
商号変更の登記が必要
株式会社ABCとABC株式会社は別の会社ですので、株式会社ABCをABC株式会社に変更するには、株主総会の特別決議によって定款変更をします。
また、商号は定款の記載事項であると同時に登記事項でもありますので、商号に関する定款変更の効力発生日から2週間以内に、商号変更の登記申請をしなければなりません。
印鑑届も必要に応じて行う
商号変更の登記申請をしても、自動的には印鑑証明書に記載される印影は変更されません。
会社実印とは、法務局に届け出ている印影に対応する印鑑を指しますので、商号を変更した場合に必ずしも実印を変更する必要はありませんが、ほとんどの会社は新商号が彫られた印鑑に実印を変更しています。
印鑑届書には、新会社実印と印鑑提出をする代表取締役の個人実印を押印し、代表取締役個人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)を添付して提出をします。
間違えた場合は更正登記も
株式会社ABCという商号で会社設立あるいは株式会社ABCという商号へ定款変更の決議をしたときに、間違ってABC株式会社として登記してしまったときはどうなるでしょうか。
株式会社ABCとして登記申請をしたのにも関わらず、ABC株式会社として(法務局の間違いによって)登記されてしまったときは、職権で更正登記を入れてもらうことになります。
申請人側の勘違いで、登記申請も添付書類もABC株式会社としてしまったときは、更正登記を申請することもできますが、法務局と事前に相談をした方が良いかもしれません。
合同会社や一般社団法人でも同じ
前株と後株に関する上記の記載は、合同会社や一般社団法人、一般財団法人についても当てはまります。
合同会社ABCとABC合同会社、一般社団法人ABCとABC一般社団法人はそれぞれ別の法人として扱われます。
会社名、法人名を変更したときは、速やかに商号、法人名変更の登記申請をするようにしましょう。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。