商業登記関係 商号変更と同時に代表取締役が辞任したときに辞任届に押す印鑑
代表取締役の辞任を証する書面
法務局に印鑑を届け出ている代表取締役がその地位を辞任するときは、その辞任を証する書面(ここでは辞任届とします)に次のどちらかの印鑑を押印しなければなりません(商業登記規則第61条6項)。
- 個人の実印(+印鑑証明書添付)
- 当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑
なお、印鑑提出をしていない代表取締役の辞任届に押す印鑑については、法律上の制限はありません。
しかし、このような場合でも辞任の意思を担保するという意味では、個人実印+印鑑証明書が望ましいと言えます。
商号変更と同人代表取締役が辞任
ABC株式会社がXYZ株式会社に商号変更したときは、必須事項ではありませんが、会社実印の変更をすることが一般的です。
この場合、印鑑の届け出をしている代表取締役が辞任届に押す印鑑は、改印前(ABC株式会社)と改印後(XYZ株式会社)のどちらでしょうか。
当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑
「当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑」とは、ABC株式会社の届出印(会社実印)を指します。
これは、当該会社の印鑑証明書を取得したときに、辞任する代表取締役の氏名が記載されたものに載っている印影に対応する印鑑です。
ABC株式会社の届出印(会社実印)を押すという結論は、届け出る印鑑自体を変更する・しない、印鑑カードを引き継ぐ・引き継がないによって左右されません。
印鑑カードを引き継ぐが、新しい印鑑を提出する場合
印鑑カードを引き継ぐが、新しい印鑑を提出する場合は、辞任する代表取締役が登録していた印鑑(会社実印)を辞任届に押印します。
印鑑カードを引き継ぐが、引き続き同じ印鑑を使用する場合
印鑑カードを引き継ぐが、引き続き同じ印鑑を使用する場合も、辞任する代表取締役が登録していた印鑑(会社実印)を辞任届に押印します。
印鑑カードを引き継がない場合
印鑑カードを引き継がない場合も結論は同様であり、新しく提出する印鑑が旧印鑑でも新印鑑でも変わりはありません。
印鑑カードを引き継がない場合も、辞任する代表取締役が登録していた印鑑(会社実印)を辞任届に押印することになります。
なお、印鑑カードを引き継がない場合は役員変更の登記が終わった後に印鑑カードを交付してもらうことを忘れないようにしましょう。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。