商業登記関係 取締役1名の株式会社の取締役が交代するときの株主総会議事録に押す印鑑
唯一の取締役の交代と選任を証する書面
役員が取締役Aのみの株式会社において、取締役Aが辞任をして取締役Bが就任するというケースがあります。
Bを取締役に選任するには株主総会の決議によってこれを行いますが(会社法第329条1項)、取締役を選任したことを証する書面として、役員変更の登記申請の際はこの株主総会議事録を添付します。
新しい取締役を選任したことを証する書面としての株主総会議事録へは、どの印鑑を押印すればいいのでしょうか。
株主総会議事録への押印義務
会社法上は、株主総会議事録への押印義務はありません。
しかし、法律上の要請とは別に、議事録の真正を担保するためにも会社実印等の押印をしておいた方がいいでしょう。
また、次の記載例のように、定款で株主総会議事録への押印を義務付けている場合は、それに従って署名若しくは記名押印または電子署名をします。
第●●条 株主総会の議事については、法令に定める事項を記載した議事録を作成し、議長及び出席した取締役がこれに署名若しくは記名押印または電子署名をし、株主総会の日から10年間本店に備え置く。
一方で、商業登記規則第61条4項の要請で、株主総会で代表取締役を選定したときは、当該議事録に押印する印鑑につき指定がされています。
代表取締役を選定したことを証する書面と印鑑
唯一の取締役は、当然に当該株式会社の代表取締役となります(会社法第349条1項)。
そして、株主総会によって代表取締役を定めた場合は、その議事録には次のどちらかの印鑑を押さなければなりません(商業登記規則第61条4項)。
- 議長及び出席した取締役の個人実印
- 変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑
議事録作成者がA(旧代表)の場合
株主総会の議事録作成者がA(旧代表)である場合は、当該議事録には次のどちらかの印鑑を押す必要があります。
- Aの個人実印
- Aが法務局へ届け出ている印鑑(いわゆる会社実印)
上記のうち「2」で済ませてしまうケースが多いのではないでしょうか。
なお、上記「1」を選択する場合はAの印鑑証明書の添付も併せて必要となります。
議事録作成者がB(新代表)の場合
株主総会の議事録作成者がB(新代表)である場合は、当該議事録に押す印鑑は一つしかありません。
それは、Bの個人実印です。
間違って会社実印を押してしまうと、補正の対象となってしまいますのでご注意ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。