商業登記関係 司法書士が一般社団法人の定款の条文を解説します(役員、役員の選任編)
一般社団法人の定款の条文の内容を解説します。
一般社団法人は協会ビジネスをされる方や社会貢献活動をされる方に人気のある法人形態です。
現在は色々なサイトで株式会社の設立に関する情報が溢れているため、ご自身で一般社団法人設立の手続きをされるケースも少なくありません。
しかし、インターネット上にある定款の内容をよく理解せずに、そのまま利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご自身で一般社団法人を設立する方のために、≫日本公証人連合会のホームページに掲載されている定款等記載例をベースとして、一般社団法人の定款の各条文について解説をしていきたいと思います。
以下、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を「法人法」といいます。
ビジネスに専念したい方
一般社団法人設立の手続きは初めて行う方には時間がかかる上に、一生のうちにその知識を何度も使うわけではありません。
一般社団法人設立の手続きは専門家に任せて自分のビジネスに集中したい方は、こちらのページをご参照ください。
役員に関する条文
第19条 当法人に、次の役員を置く。
⑴ 理事 3名以上●名以内
⑵ 監事 ●名以内
2 理事のうち、1名を代表理事とする。
一般社団法人には、1人または2人以上の理事を置かなければならず(法人法第60条1項)、理事会設置一般社団法人においては、理事は、3人以上でなければなりません(法人法第65条3項)。
この定款例は理事会設置一般社団法人を前提としていますので、理事は3名以上が法律上求められており、ここではそれを「理事3名以上」というところで表現しています。
また、理事会設置一般社団法人及び会計監査人設置一般社団法人は、監事を置かなければならないとされています(法人法第61条)。
役員に上限を設ける
理事会設置一般社団法人に必要な役員の最低数は、理事3名と監事1名です。
この定款記載例は、任意に役員数の上限を設けています(上限は必ずしも定める必要はありません)。
役員の人数が多くなりすぎることを事前に防ぐという意味があり、もし●名を超える役員を置きたいときは社員総会の特別決議によってこの定款の規定を変更します。
代表理事の人数
法律上は代表理事の人数に制限はありませんので、理事が3名であるときに、理事3名全員が代表理事であっても問題はありません。
この定款記載例では代表理事を1名に限定しており、上限を設けるメリット等については上記のとおりです。
もし代表理事を複数名選任するときは、社員総会の特別決議によって定款を変更しなければ定款違反となってしまいますので注意が必要です。
役員の選任に関する条文
第20条 理事及び監事は、社員総会の決議によって選任する。
2 代表理事は、理事会の決議によって理事の中から選定し、代表理事をもって会長とする。
3 監事は、当法人又はその子法人の理事又は使用人を兼ねることができない。
次の事項においては、法人法で定められていることがこの条文には記載されています。
理事及び監事は、社員総会の普通決議によって選任し(法人法第63条1項)、代表理事は理事会の決議によって選定します(法人法第90条2項)。
そして、監事は、一般社団法人またはその子法人の理事または使用人を兼ねることができません(法人法第65条2項)。
役付理事を定める
一般社団法人の役員は理事及び監事であり、「会長」という役職は法人法に定められているものではありません。
多くの一般社団法人では、次のような役職を任意に置くことをできるように定款で定めています。
- 会長または理事長
- 副会長または副理事長
- 専務理事
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。