商業登記関係 一般社団法人・一般財団法人の理事・監事の任期
一般社団法人、一般財団法人の理事、監事
一般社団法人には、1人または2人以上の理事を置かなければならず(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、法人法といいます)第60条1項)、理事会設置法人であれば理事は3人以上置かなければなりません。
また、一般財団法人には、評議員、評議員会、理事、理事会及び監事を置かなければなりません(法人法第170条)。
一般社団法人及び一般財団法人の理事・監事には株式会社の取締役・監査役同様に任期があり、同じ人が理事・監事を続ける場合も再任手続きが必要となります。
理事・監事はそれぞれ一般社団法人の社員総会、一般財団法人の評議員会で選任されますが、社員総会と評議員会を併せて社員総会等と表現します。
理事、監事の任期
一般社団法人、一般財団法人の理事、監事の任期は次のとおりです。
理事 | 監事 |
---|---|
理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする(法人法第66条)。 | 監事の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする(法人法第67条1項)。 |
定款または社員総会により短縮可能 | 定款により、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで短縮可能 |
理事、監事の任期の計算方法
理事の任期を選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで、としていて、事業年度末を3月末としている一般社団法人Xを例にします。
上記の一般社団法人Xが、2017年6月20日の定時社員総会で理事Aを選任した場合、この理事Aの任期は2019年3月末の事業年度に関する定時社員総会の終結時まで、となります。
(なお、この場合2017年4月1日から2018年3月31日までの間に選任された理事の任期満了日について結論は同様となります。)
2019年年6月20日までという単純な2年間という計算ではありませんし、2019の定時社員総会を2019年5月10日に行えば、2019年5月10日の定時社員総会が終わった時点で任期も終わります。
なお、一般社団法人Xが定款で定時社員総会の開催時期を、例えば事業年度末日から3ヶ月以内と定めているような場合、2019年の6月末までに定時社員総会が開催されなかった場合は、2019年の6月末日が理事Aの任期満了日となります。
理事、監事の任期の起算日
法人法第66条及び第67条1項にあるとおり、・監査役の任期の起算点は「選任」時です。
一般社団法人Xが、2017年3月20日に理事Bを臨時社員総会で選任し、理事Bが2017年4月20日に就任承諾をした場合の理事Bの任期は、2018年3月末の事業年度に関する定時社員総会の終結まで、となります。
就任時を起算日とすると、理事Bの任期は理事Aと同じ2019年6月頃の定時社員総会までになりますが、あくまで選任時が起算日となるため、理事Aの3-4ヶ月前に選任、就任したのにも関わらず、理事Aよりも理事Bの任期は約1年間短くなります。
理事、監事の就任日
理事、監事の就任日は、理事、監事として選任された後にその就任を承諾した日となります。
この「就任日」は一般社団法人、一般財団法人の登記簿に記載されます。
また、「選任日」は登記簿に記載されないため、もし選任日と就任日が異なるときは、登記簿からは理事の正確な任期が分かりません。
事業年度の変更と理事、監事の任期
一般社団法人、一般財団法人が事業年度を変更したときは、在任中で任期中の理事、監事の任期も影響を受けます。
一般社団法人Xが事業年度末を12月末とした場合、理事Aの任期は2018年12月末の事業年度に関する定時社員総会の終結までとなります。
任期規定の変更と理事、監事の任期
一般社団法人、一般財団法人が理事の任期規定を変更したときは、在任中で任期中の理事の任期も影響を受けます。
一般社団法人Xが理事の任期を、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとした場合、理事Aの任期は2018年3月末の事業年度に関する定時社員総会の終結までとなります。
監事の補欠規定
監事は、定款によって、任期の満了前に退任した監事の補欠として選任された監事の任期を退任した監事の任期の満了する時までとすることができます(法人法第67条2項、第177条)。
再任でも登記申請は必要
同じ人が理事に就任しても、再任した旨の登記申請は必要です。
再任した日から2週間以内に管轄法務局へその旨の登記申請を行うことが求められており、この期間を過ぎると代表者が過料の対象となる可能性があります。
一般社団法人、一般財団法人と休眠一般法人の整理
最後の登記から5年を経過している一般社団法人または一般財団法人(併せて休眠一般法人といいます)は、一定の手続きを経て登記官に解散登記を入れられてしまいます。
理事の変更登記を2年毎にちゃんと申請しておけば、休眠一般法人として整理されることはありませんし、2年毎の理事の変更登記は法律で義務付けられています。
休眠一般法人になり解散登記を入れられてしまうと、取引相手や会員になろうとしている人等が登記簿を見たときに不審に思われる可能性があり、また、解散状態を解消しようとすると費用も手間もかかってしまいます。
理事・監事の任期管理・登記はしっかりしておくことをお勧めします。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。