商業登記関係 一般社団法人が理事を変更せず、代表理事のみ交代するときの手続きと登記
一般社団法人と代表理事
一般社団法人には1名以上の理事を置かなければならず、原則として各理事は一般社団法人を代表します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「法人法」といいます)第77条1項、2項)。
一方で、特定の理事のみを代表理事とするときは、当該代表理事以外の理事は、法人を代表することはありません(法人法第77条1項但書)。
ところで、理事が複数名いる法人の多くは、特定の理事のみを代表理事としています。
理事は変更せずに代表理事を交代する必要が生じたときは、どのような手続きが必要となるでしょうか。
代表理事の交代
理事のメンバーは変更しなくても、代表理事を持ち回りで行う法人もあれば、代表理事が辞任するために交代しなければならないという法人もあるかもしれません。
代表理事が理事を辞任するため、代表理事を交代するケースがあります。
あるいは、理事のメンバーは変更せず、代表理事のみ交代するケースもあるでしょう。
ここでは後者の、理事に変更は無いけれども代表理事を交代する手続きについて見ていきます。
代表理事を交代するときの手続き
代表理事の交代とは、
- 現在の代表理事の退任
- 新しい代表理事の就任
の2つの組み合わせのことを指します。
代表理事を辞任する
代表理事は、理事としての地位を有しながら、代表理事の地位のみを辞任することができます。
このとき、代表理事の辞任届には、辞任する代表理事が印鑑を提出している代表理事であるときは、届出印(法人実印)を押印しなければなりません。
また、理事会非設置一般社団法人において、定款の規定に基づき社員総会の決議によって選定された理事が代表理事を辞任するときは、社員総会の決議が必要です。
その他に代表理事の地位のみを退任するケースとしては、当該代表理事が権利義務代表理事になっているようなケースが考えられます。
代表理事を選定する
理事の中から新しく代表理事を選定します。
代表理事の選定は、理事会を設置しているかどうかによってその方法が変わってきます。
理事会がある一般社団法人であれば理事会の決議で代表理事を選定し、理事会のない一般社団法人であれば、
- 全員が代表理事となる
- 定款で代表理事を定める
- 定款の定めに基づく理事の互選または社員総会の決議
となります。
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
代表理事の変更登記
代表理事に変更が生じたときは、その効力が生じてから2週間以内にその変更登記を申請します(法人法第301条1項)。
理事会設置一般社団法人の代表理事が変更したときの添付書類の一例は、次のとおりです。
- 辞任届
- 理事会議事録(辞任する代表理事が届出印を押印)
- 就任承諾書
- 就任する代表理事の印鑑証明書
理事会議事録には、辞任した理事が出席し、当該理事が届け出ていた印鑑を押印することにより、理事会に出席した理事・監事の印鑑証明書を添付する手間を省略することができます。
また、この他に印鑑届書を一緒に法務局へ提出します。
登録免許税
一般社団法人の役員変更に係る登記の登録免許税は1万円です。
1つの申請でする限り、何名役員を交代しても、資産がいくらあったとしても登録免許税に変動はありません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。